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2012年4月30日 (月)

雑踏オノマトペ

寺門静軒「江戸繁昌記」の序において「ああ、この無用の人にして、この無用の事を録す」という有名な一文がある。


天保年間の江戸の「繁華雑踏」を庶民の立場から記録した崩し漢文。当時は発禁&追放になるくらいのベストセラー。
どれくらい「庶民」かというと、吉原遊郭で遊んだことがないくらいのリアル庶民。

引用文は、儒学者でありながら仕官の道を閉ざされた静軒の、諦観とも皮肉とも謙遜とも気概とも言われる文言ですが
えー、作者は今回そのままの意味から出発します。

おれも「無用の人」であることは間違いない!
生きているあいだに「無用の事」を録さねばならぬ!

そうだ、雑踏の音を記録しよう。略して「雑音」、これは無用だ! まちがいない!

そういうわけで雑踏をオノマトペに変換します。雑踏の文字化け作業です。
ちなみに「雑踏」とは……多人数でこみ合うこと。人ごみ。混雑。
「オノマトペ」とは……擬声語。擬音語「コケコッコー」や擬態語「てきぱき」などのこと。

人混みの「ごみ」は「ゴミ」だ!
 


①とりあえず町田駅前

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ルミネ丸井東急109に囲まれた町田駅前のデッキ  クルクル回るモニュメントも「無用」だ!

…………

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いつのまにか「まほろデッキ」のプレートが貼られていた

以前あった花壇がなくなり、「まほろデッキ」になっていた。三浦しをんさんの小説「まほろ駅前多田便利軒」にちなんでいるらしい……。だが、作中そんなデッキ登場したかな。

そりゃ多田も行天もすきだが、エッセイの方が「無用」でいいとおもうの。

さらに別のところでもっとエグいモノを見つけてしまった。

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高原書店ちかくの電柱に「まほろ横丁」の文字      小田急町田駅北口すぐの電柱からずっと……

これは!  商工会議所は本気だ。
「フィクションはノンフィクションに買い取られ(byTHE BACK HORN)」とは、このことか。
…………万が一、町田市が「まほろ市」に名称変更したら………………、変わらず「神奈川県出身」と詐称し続けよう。

まあでも、みんな好きにしたらいいよね☆ 作者も好きにするから☆
そんなことはさておき、町田駅前の雑踏を文字化けします。



↑低音
車「ゴ――――――」「ガー」「ザー」「ブーン」
多人数が動く音「ザワザワ」「ガサゴソ」
話声(男性)「ザワザワ」
足音「コツコツ」「カツカツ」「タッタッ」「ザッザッ」「ドコドコ」
カラス「アーアー」
扉の開閉「ガチャン」
ウォレットチェーン付き足音「チャッチャチャリチャリチャリ」
駅アナウンス「ムニャムニャ」
話声(女性)「ペチャクチャ」「ペラペラ」
↓高音

総評:ビルの谷間に片側二車線道路があり、その上にデッキがあるせいか自動車の走行音がずっと反響している。ちょっとした笛の構造である。ビルの空調音や電車の走行音も混じっているようだが判別できず。デッキの上なので足音が多い。途中「ろくおん?」と言っているのは、作者を後ろ指差してのこととおもわれる。


②ヒカリエ開業直前の渋谷駅東口

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デッキはすでに通行可能だった                国道246の上の首都高


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一番手前は東急東横線かしら



↑低音
車「ゴ――――――」「ブー」「ゴロロロロ」「ヒー」
バイク「ブルンバルルルルル」
多人数が動く音「ガヤガヤ」「ザワザワ」「ガタガタ」「バタバタ」
駅アナウンス「モゴモゴ」
話声(男性)「ボソボソ」「ペラペラ」
足音「ペタペタ」「パタパタ」「コッコッ」
エンジン音「プシュー」
ブレーキ音「キュキッ」
カラス「カーカー」
話声(女性)「ペチャクチャ」「ベラベラ」
鈴の音「チャリンリン」
発車ベル「ルルルルルルルルル」
不明「キ―――キ――――」
↓高音

総評:車列と人波の密度が濃い。走行音は道路をガリガリとえぐるような響きが通底する。ちょっとした巻き舌みたいなものだ。歩道橋上にいたせいか人の足音は「ペタペタ」に聞こえる。特徴的なテクスチャーなのかもしれない。気になるのは町田駅前と同じく会話のなかに「千円」という単語が聞き取れる点だ。「せんえん」は聞き取りやすい音声なのだろうか。


③新宿伊勢丹の屋上

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伊勢丹本館8Fに当たる屋上庭園 けっこう人がいた



↑低音
空調音「ボ――――――」
多人数が動く音「ザワザワ」
店内BGM「ファーンファンファララー」
話声「クチャクチャ」「ポソポソ」
アナウンス?「ムニャムニャ」
ブレーキ音「キーキー」
↓高音

総評:地上から離れていると雑踏のざわめき(人声と車走行音)はそれなりに抑制される。空調は風の音も大きいが耳障りな部分はモーター音だろうか。


④新宿駅東口

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ALTA前は待ち合わせの人多い                一番東側の線路は埼京線か山手線か中央線か



↑低音
車「ゴ―――――」「ブーン」「ブロロロロロ」「グオー」
風「ブオ―――――」
多人数が動く音「ザワザワ」「ザッザッ」「ゴソガソ」「ガヤガヤ」
話声(男性)「ボソボソ」「ペチャペチャ」「チッ」「ゴホッ」
ブレーキ音「プシュッ」
自転車「シャーシャーチチチチチ」
カラス「アーアー」
足音「コツカツ」「タッタッ」「ダコダコ」「ガサッガサッ」
話声(女性)「ペチャクチャ」「ペタペタ」
屋外広告音楽「チャララ~ンラッラッラ~」
空き缶「カキンッ」「チャリン」
↓高音

総評:意外にうるさくない。東口広場はスペースがあるので反響効果が薄いのかもしれない。屋外広告の音楽がずっとBGMで流れているのは耳につく。


⑤四谷見附

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上智大学とニューオータニと迎賓館の近く          外堀通りと新宿通りの交差点

関係ないけど、このへんで信号待ちをしていると、白手袋運転手に白レースカーテン(後部座席のみ)つきの黒塗りハイヤーが大量に横切る。永田町か。
ところで「わかば」のたい焼きはおいしい。ムッシャムッシャしながら録音すればよかった、と今になって後悔。



↑低音
車「ゴ―――――」「ブ――」「ズー」「ブロロロロロ」「ゾゾー」「グイーン」
風「ブオ―――――」
バイク「ブオンブオンブブー」
足音「スタスタ」「ガサゴソ」「ザッザッ」「ダコダコ」「トコトコ」
自転車「シャーカララララ」
扉の開閉「ガチャガチャン」
話声(男性)「クチャクチャ」「ワハハハハハ」「ボソボソ」「ガヤガヤ」
話声(女性)「○○○さ~ん」「ペチャクチャ」「オホホホホホ」
クラクション「フィーフィー」
警戒音「ピピーピピー」
↓高音

総評:交通量が多いのであらゆるポイントからさまざまな種類の重低音が発生し、フィードバックしている。線路の位置が谷底のようになっているためか反響効果もおもしろい。人通りの多い歩道脇に突っ立ていたため、笑い声が近い。というか、はっきり「○○○さ~ん」と叫んでいる方はわざわざこちらに近づいてきてからボリュームを上げた。マイクを意識してのことかもしれぬ。そのまま生かそう。


⑥建設中の東京駅

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ニュー東京駅まさかの銅葺 気合入っているな……   行幸通りまっすーぐ行くと皇居桔梗門のあたり



↑低音
車「ゴ―――――」「ブロロロロロ」「ブウーンブン」「グイーン」
電車「タタンタタン」
工事音「ガコンガコン」
風「ブオ―――――」
多人数の動く音「ガサゴソ」「タッタッ」
足音「コツコツ」「パタパタ」「トコトコ」
話声(男性)「ハキハキ」「ペラペラ」「ボソボソ」
エンジン音「プシューシュッ」
スズメ「チュンチュン」
不明「キーン」
↓高音

総評:駅舎が工事中であることと、新幹線が通ることが特徴。遠くで規則正しいリズムを刻んでいる。はじめて、カラス以外の鳥(おそらくスズメ)がいたのは皇居が近いためだろうか。


⑦花見頃のおわった上野不忍池


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修学旅行生と外国人観光客っぽい人と謎の人が多いようだ     葉桜と蓮と弁天堂さん



↑低音
車「ブ―――ン」「ゴ――――」「ブロロロロロ」
風「ヒュ―――――」「ボ――――――」
扉の開閉「ガララガシャン」
足音「ザシュッザシュッ」「タッタッ」
自転車「チャリリリリリリカラララッラ」
人声「ペチャクチャ」「ボソボソ」「ハーハー」
鈴の音「チャリンチャリン」
鳥①「チュンチュン」
鳥②「アーアー」
鳥③「キィーキィー」
鳥④「チチチチチチ」
鳥⑤「チッチュイチッチュイ」
鳥⑥「ヒュイヒュイ」
警戒音「ピーピー」
不明「ファンファン」
↓高音

総評:今までビルの谷間において感じていた耳鳴りのような「ゴー」という反響音は聞こえない。多人数がいても足音もあまり響かない。鳥の声の多さは多種類なのか個体差なのかは不明。雑踏のなかではヒーリング部門にカテゴライズできるとおもわれる。


まとめ:雑踏はオーケストラだ! そして文字化けさせるのはすこぶる難しい! 「ザワザワ」は万能オノマトペだ!
雑踏の音は「無用」でも「ゴミ」でもなかった。高層ビルに挟まれた地点では自動車や人々のざわめきが上へ上へと垂直的に反響して、耳鳴りのような音になっていた。公園や墓地が「都会のオアシス」と表現されるのは、聴覚にとってのオアシスという意味合いもあるかもしれぬ。22世紀からは音を吸収するビルや道路をつくることを提案したい。
そしてココだけの話、三代目三遊亭金馬師匠レベルの(三代目 三遊亭金馬 名演集 1 居酒屋/目黒のさんま/長屋の花見/唐茄子屋政談など)多彩なオノマトペを目指したが(志は高いほうが良いのです)いまいちバリエーションが広がらず。基本的に「ザワザワ」に聞こえてしまう己の狭量をうらめしくおもう。とくに反響音のオノマトペが今後の課題だ。この遠近感をどうやって文字化けさせたらよいものか。

最後に「雑踏オーケストラ」ということで、それぞれの雑踏音をクラシック曲にたとえてみました。
町田駅前:モーツァルト オペラ「魔笛」第1幕導入
渋谷駅東口:ドヴォルザーク「新世界」交響曲第9番
新宿伊勢丹屋上:ブラームス「ハンガリー舞曲」第1番
新宿駅東口:リスト「愛の夢」
四谷見附:ワーグナー「ワルキューレの騎行」
東京駅:バッハ「チェンバロ協奏曲」第3番ニ長調
上野不忍池:グリーグ「ペール・ギュント」朝

ところで、瓦屋根二階の町並みと車社会以前の「お江戸」の繁華の弊害を嘆きつづけて、明治元年に亡くなった静軒居士がこの雑踏音を聞いたら「これも太平繁華のなせること」と苦笑いするんじゃないかなぁ、と想像してみるとなんだかちょっと嬉しいのです。

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「チンプイ氏と耳のカタチが似ていらっしゃる!」という理由で購入したTEAC TASCAM リニアPCM/ICレコーダー DR-05を使いたかったのです

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