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2012年8月17日 (金)

絵馬ーケティング

サイレント・クレーマーという言葉をご存じだろうか。
クレーマーがサイレントなのだ。
企業側に苦情を言うことなく、不買行動(二度と商品を買わない・サービスを利用しない)によって不満を示す消費者のことだ。基本的に何も示さず、去る。
それでも知人などには「あの会社よくないよ」と言うこともあるらしい。いっそサイレント以上だ。
一説によれば、全体の80%以上はこのサイレント・クレーマーだともいわれる(ほんとか)。

もっとも交渉すべきクレームにかんしてさえサイレンスなこの方々。
もしかして、希望を訊く場合のアンケート調査にもサイレンスで一貫しているのではなかろうか。
この方々(80%以上)の本音はどこで発露されるのか。井戸? 2ちゃん?

そういうわけで絵馬
ご存じだとおもうが、神社仏閣で願い事を書く板。たいてい300~600円。その場で奉納する。
サイレンスな方々もここには本音を書くのではなかろうか。絵馬には現代人の悩みや本音が詰まっている! (たぶん) 
江戸時代のお江戸では縁切り神社が大流行だったと聞いた(女性から離縁できなかった)。本音だ!
そういうわけで第1回絵馬ーケティングを実施。

今回は東京都内で作者が個人的に行ったことのない神社へ行ってきました。


個人的に行ったことのない神社①文京区根津・根津神社

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樹木が鬱蒼としている根津神社                          すぐ近くに根津教会

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堂々掲げられた「文豪の街」プレート                  新興地域では不可能な小路のあじわい

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表参道にて「カラス子育て中 気が立っているので通行ご注意ください」とのこと     神楽殿かっこいいな

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唐門をくぐってさっそくお詣り

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大株のカヤを囲むようにして奉納絵馬「あった、あった、これだこれだ」

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これは……新しい絵馬かもしれない                   やっぱりつつじ苑有名だよね(見ごろは春、いま時分は閉苑)

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こちらは雪化粧の社殿かな                        干支の辰がカタツムリっぽい

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へー七五三詣ならではの絵柄もあるのかー             へーキャラクター物もあるのかー

左下に「根津神社」の落款のない絵馬(ライオン丸も)はここのオリジナルではないのだろう。かまわず奉納できるようだ。

肝心の内容だが、予想以上に個人情報がガッツリ書き込まれていて撮りずらい。
ここはおもいきって撮影しないことにする。

まず目についたご祈願は「東京大学合格」「医学部入学」多数。地元密着型の願い事である。
※根津神社は東京大学と日本医科大学のあいだに位置します。

ほかに目につくのは「ひらがな」物である。ちびっこ自身が書いたか、ちびっこの代筆とおもわれる絵馬多数。「やすまず学校へいけますように」など。

さらに「英語」物である。在日外国人の方や外国人観光客の方も奉納していくとはレベル高い(外国人観光客の方は「お守り」「絵馬」が説明されない限り、なんなのか不明なので手を付けないことが多い)。すみません、正確に読み取れません。

御礼の絵馬もありました。「いつも家族を見守ってくださり、ありがとうございます」など。

(個人的に)いいね! と感じた絵馬をかってに紹介。
「元気なあかちゃんを産めますように ○○○(お名前)」の横に
「○○○が無事あかちゃんをうめますように △△△(お名前)」というセット!
一緒にご祈願されたんですな。お友達かな。そういうの、いいよね!

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ほんとうはカテゴリー別にカチカチ数えようかと目論んでいたのですがカテゴライズ難しいな

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今日明日の悩みから将来の職業から自分以外のひとへのご祈願から、こんな大局的な願いまで幅がグローバルでした

根津神社の絵馬ーケティング結果;
地元色は濃く感じられるが、合格祈願、学業成就、安産成就、息災延命、病気平癒、家内安全など内容は十人十色である。それでも交通安全、商売繁盛、良縁祈願、開運は見当たらなかったので、ご参詣の現代人は、自助努力とそれに見合った結果を望む傾向にあると言える。

ちょっと寄り道。

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境内の西側に「乙女稲荷」があった。いい名前だ。      奉納された鳥居がかっこいい。こういうのどなたが作るのか。

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ハート柄のリボンを結ばれたお稲荷さまラブリー♪          おとなりの駒込稲荷神社のお稲荷さまもラブリー♪

どこの神社も境内にいろいろ由来あるものが安置されている(ここでは行き場を失った庚申塚が集められていた)ので、よろずの治外法権の感がある。じっさい明治以前は寺社の領域は治外法権だったらしい。いまなお懐が深い。

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蝉口密度が高いでござる                       このハトおかしくないか?


個人的に行ったことのない神社②江東区亀戸・亀戸天神社

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境内入口の太鼓橋はスカイなんとか・ビューポイント

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老舗の甘味処「船橋屋」……かき氷が呼んでいる         天神橋(うっかり左を見上げるとスカイなんとかがいる)←どこからでも視界に入ってくやしい

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藤まつり(見ごろは5月頭)が有名ですな          藤(の葉っぱ)が威勢良いですな

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お詣りもつつがなく済んだところで

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絵馬が大漁                              藤の花と梅の花と太鼓橋と

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道真公らしさを感じる梅型                       ここは千羽鶴の奉納もおおい

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「幸運を招く鷽(うそ)」って書いてあるな                   ああ、こういうの

なんか覚えがあるけど、なんだったかなーと考えていたところあとで思い出した。
「弘化二年正月の二十四日、きょうは亀戸の鷽替えだというので、午少し前から神田三河町の家を出て、亀戸の天神様へおまいりに出かけました。」(半七捕物帳三「熊の死骸」より)

あこがれの半七もおまいりしている! やった! ※「半七捕物帳」はフィクションです

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表参道わきのガードレールにもいらっしった           絵馬の由来が書いてある

もともと生きたお馬を寺社に祈願や御礼で奉納していて、きっとお馬ばかり奉納されてもお世話に困ったのか、じょじょに木彫りのお馬や額になっていき、最終的に絵馬になった(ザックリ)。額の段階でモチーフは馬でも馬じゃなくてもよくなったらしい。コンパクトにまとまったもんだ。

「こんにちでも諸方の神社に絵馬が懸けてありますが、むかしは絵馬というものがたいへんに流行したもので、江戸じゅうに絵馬専門の絵馬屋という商売が幾軒もありまして、浅草茅町の日高屋なぞは最も旧家として知られていました。」
「/古い絵馬や珍しい絵馬をあつめることを一種の趣味とする人々も少なくなかった/近郷近在の神社などを巡拝しながら珍しい絵馬をあさって歩くようにもなる。元来この絵馬はそれぞれの願主が奉納したものだから、他人がみだりに持ち去ることを許されないのであるが、なんとか頼んで内証で貰って来るものもある/甚だしきは無断で引っぱずして来るのもある。いわゆる蒐集狂で/」
(半七捕物帳四「正雪の絵馬」より)

絵馬マニアいたのか。現代もお江戸もかわらずだな。 ※「半七捕物帳」はフィクションです

だいぶ横道へそれたが、肝心の絵馬のご祈願はというと、
「○○○大学△△△学部 合格」「□□□高校 入学」など。
目につくものは殆ど合格祈願! 道真公おそるべし。きっちり第一志望から滑り止めまで書き込んである……撮影できない。

亀戸天神社の絵馬ーケティング結果;
90%くらいを合格祈願が占める。ほかは病気平癒、家内安全など。
現代が学歴社会、学閥社会よりであることの証明、あるいは文武なら文>武と言える。

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それにしても1年でこの量なのかな。お焚きあげ大変だな。    境内にミツバチ色のトンボがいた。めずらしい。


個人的に行ったことのない神社③新宿歌舞伎町の端・花園神社

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雑居ビルのすきまに参道                             新宿三越がビックカメラになった件

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昼なお薄暗い

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防犯対策がとられた唐獅子像                       防犯対策がとられた手水舎

……ひしゃくが盗まれるなんて世知辛いなー……と、前にも思ったことある気がする。デジャヴ?
…………おれ、ここ通ったことあるな……(素通りしたらしい。不信心者)

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きっちりお詣りさせて頂いたところで

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絵馬でござる                                 やっぱりカタツムリっぽい辰

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こっちは飛んでいる渋めの辰                             お稲荷さまだ

さっそくご祈願の内容をチェック
「女優になれますように」「ミュージシャンとして成功できますように」「○月×日からの舞台が成功しますように」など、芸能関係のご祈願多数。
※コノハナノサクヤヒメを祀った芸能浅間神社が境内にあり、江戸時代から見世物や演劇などの興行(いまも酉の市の時に見世物小屋が出る)に縁深かったため、芸能関係の奉納が多いそうだ。

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芸能のご利益                                横山さんは愛されている

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画のばあいもある

新宿花園神社の絵馬ーケティング結果;
60%くらいは芸能関係のように見えた。ほかは合格祈願、家内安全、厄祓いなど。
芸道上達という水物のご祈願ながら「一発当たりますように」みたいなものは見つけられなかった。ここにも現代人の堅実性の傾向がうかがえる。自助努力&相応の見返り。


社務所を突撃した
せっかくなので「この絵馬は絵馬師さんが描いているのですか」と質問してみた。
禰宜さん(お役は伺わなかったので不明)はびっくりした顔をした。まずい、どうも時代錯誤なことを口走っているらしい。慌てて「江戸時代からの絵馬について調べていまして」と付け加えた(ウソではない)。あわあわ。
なんの前触れもなく訊いたにもかかわらず答えてくれたお話を総合すると
・絵馬やお守りは専門の業者さんが一括して製造納品する
・自分自身は絵馬だけで生計をたてている絵馬師という方は聞いたことがない
・11月くらいには干支の絵馬は翌年のあたらしいものに替わり始める
・大きな額を奉納するときには美大生がご奉仕で描くこともある
・ほかに訊けそうなところは神社本庁か広報誌のスポンサーをあたるといいかもしれない

そっかー、絵馬師さん絶滅されたのか。作者はてっきり今でも絵馬師さんが原案を描いて、それをプリントしているのだと思っていた。もっとシステム化してしまったらしい。200年のあいだに。ざんねんだ。えどぶんか。

ところで気になったのは「美大生が絵馬を描くこともある」というお話。
ということは、シロウトの作者が自前してもよいのでは? むは!

絵馬を自作しよう
さっそく桂の版画用板を購入した(色が白っぽかったから)。
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絵馬は本来5角形なのだが                    干支の辰を狩野派ふうに描いてみた(あくまでイメージ)

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彫ってみた                                      あ、

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鰹節のような削りカス                          あ、角がぜんぶ折れた

これが「年を取って丸くなる」ということか! いつまでもトンガってばかりはいられない!(シャープなラインが彫れず困っております)

こういう手作業をするたびに感じるのは、握力の見事な衰退ぶり。
木の板をおさえているだけで手が痛む。
現代人はそろそろ本気で、握力が低下しないキーボードを手に入れるべきだとおもう。

というわけで、1週間くらいかかって完成しました。

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完成(と思いたい)             

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アマテラス氏・ウカノミタマノカミ氏・そこつつのおのみこと氏・なかつつのおのみこと氏・うわつつのおのみこと氏・たけみなかたのかみ氏・やさかとめのかみ氏・オオクニヌシ氏・道真公、みなさまでわっしょい! として頂きたい

さっそく奉納しよう。


個人的に行ったことのない神社④町田市・町田天満宮

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地元だがはじめて来ました                              参宮橋がある

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まずは手をすすいでお詣り(ひしゃくに町天と書いてある)

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絵馬あるある

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天神さまの梅の木                                干支の辰

町田天満宮の絵馬ーケティング結果;
「○○高校 合格」「××大学 合格」「△△試験 合格」など天神さまらしい合格祈願が半数以上だ。そして学校名に地元色が濃くでている。ほかは健康祈願、病気平癒がおおい。現代人は生まじめで控えめだ。あと、一番高いところに奉納したいらしい。

あれ、なにしに来たんだっけ。


まとめ;イメージとやや違った
イメージでは七夕まつりの短冊くらいの自由奔放なご祈願が書かれている予定だったが、各神社には「御祭神」「ご利益」というものがあることを不信心者ゆえ、よく理解していなかった。
それぞれの「ご利益」に対する悩みをもっている方々がきっちり目的をもってご参詣される(さらに絵馬を奉納する)わけで、分母にそうとうの偏重がある。
そういう点では根津神社のように絵馬に書かれたご祈願がバラバラだと、そこに地元密着型の親和性を読み取れる気がする。
ほかにも「いま現在悩んでいる」ひとが圧倒的に絵馬を奉納されるためか、ご祈願成就の時間的スパンが短い(名のある=ご利益が有名な神社ほどその傾向が強いのかも)。
結果、わかったのは現代人の悩みや本音、というより現代人も神社すき、詳しい、ということの方だった。

Photo
こういう時に使いたい英文メモ;May all your dreams come true.

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