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2013年3月 9日 (土)

ごはんは文房具です

あ。1ばばあがすずめのしたをきったよ。


(安野光雅著『きりがみ昔咄―舌切雀』より)






おとぎ話の「舌切り雀」では、スズメという弱者の存在を主軸とし、心優しいじいさんと、心浅ましいばあさんの対比を原動力にシーソーのように物語が展開される。「つづら」という当時は身近であったアイテムをキーポイントとして挿み現実味を印象付けつつ、欲深なばあさんを恐怖に追い込んで、めでたいんだか、めでたくないんだか、判然としないまま結末を迎える。そうやって数多くの疑問を残すことで聴き手の興味をひきつけ、論理的思考を促す作用を狙っていたのかもしれない云々。

試しにインテリ気取って説明してみたけど、ほんとうに気になる疑問は「え、スズメ。糊なんか食べるの?」という1点だ。
小判とかつづらとか、ばばあとか、どうでもいい。


ごはんは文房具だった

疑問をもったので当時ちびっこだった作者はもちろん大人たちに訊ねた。
ちびっこ作者「スズメって糊、食べるの?」
おとな「食べない」
なんとも消化不良な答えだ。糊の容器には「たべられません」ってでかでかと書いてあるしさ。スズメ死んじゃうんじゃない? 意味わかんねぇ。大人って偉そうなわりにショボいぜ。
こういうことを積み重ね、その後ちびっこ作者は大人たちから“問題のある子ども”としてマークされるようになった。ちびっこの疑問にはきちんと答えるべきだとおもうの。

で、大人たちがちょうショボいので自分で調べました。古典落語のなかに答えを見つけたよ。

「おまんまがあったら、ひとかたけ貸してくれないか―」
「―あしたまで置きゃあね、臭くなっちゃう。糊になっちゃうんだからね」
(三代目三遊亭金馬『堪忍袋』より)


そうか! 古くなったごはんをそのまま糊にしていたのか! でんぷんベタベタだもんね! 100%白米と水で作った糊ならスズメが食べても食中毒を起こさないね! やったね!

※ちなみに作者はご存じなかったけど、「そんなの常識だろ」という方は以下読む必要ありません。

ちびっこ作者の思い描いていた“糊”とは、成分がちがうってことがわかってひとり納得。

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ちびっこ作者の思い描いていた糊             後頭部に凸部を切り取ると貯金箱になる、と書いてある

最近この糊の容器にミルクプリン詰めて売り出されて話題になっているらしい。そりゃ食べちゃうね。

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舌切り雀がなめたであろう糊

↑コレ。先ごろ、炊いたご飯をうっかり置きっぱなしにしてダメに(臭い!)してしまったので、それを水煮しました。たぶんもっと潰したほうがいい。
これ、ほんとうに接着力あるのかしら。

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ミルキーな色紙をご用意しました

糊をたくさん使う作業と言えば、ちぎり絵だ! というわけで色紙を多数ご用意。

指先がガサガサになったけど、できた。

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なにを模ったのか、わかった人は手を挙げてー!             くにゃっくにゃだ

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比較のためフエキノリでもやってみた(※ミルクプリンではありません)

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なにを模ったのか、わかった人は手を挙げてー!            こちらもウネウネだ

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正解:葛飾北斎の富嶽三十六景『凱風快晴』1830年代の名作

北斎先輩が生きていた頃はごはんを糊にしていただろうけど、一体いつ頃まで、臭くなったごはん=糊、で生活していたのか。電気通って冷蔵庫できるくらいまでかな? それとも化学薬品出回ったころかな?
明治時代に東京市中では一般家庭でもときどき停電しつつ、通電していたという噂だ。
一方、東京の辺境・町田市南部では大正8年(1919年)に電気が通ったという記録がある。
……通った、というより通した。まず電線電柱は自費で用意、設置の際には労役があり、相武電力という小さな水力発電の会社だったので社債を買わなければならず、しかも夕方から朝までの送電だったとか。おおごとだな。

そんなことを考えあわせると20世紀までは、このくにゃっくにゃになるごはん糊、広く使われていただろう。たぶん。
※くにゃっくにゃになったのは作者に水分調節の腕がないせいかもしれない。

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20世紀のごはん糊⇒21世紀フエキノリまでタイムワープ! ……人類は進歩した? 見た目は微妙だが、どちらも接着力は充分だ。


ごはんは糊付けだった

また、前出の安野光雅著『きりがみ昔咄―舌切雀』には、こんな場面が描かれている。

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着物を糊付けするために、ごはん糊を軒先に出していたらしい

そうか、ごはん糊でお着物の糊付けを……!!

というわけで、ごはん糊 vs スプレー糊 による糊付け対決です。

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冷えて再び固くなってきたので、刷毛でつぶす           対して一般的な糊付け用スプレー

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クシャックシャTシャツ                              もう一枚のクシャックシャTシャツ

ちなみに作者はTシャツをクシャックシャで着るものだとおもっていたので、今回人生ではじめてアイロンかけ&糊付けしました。ふだんから糊付けまでしているひと多いのかな。みんな、えらいな。

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刷毛でペタペタ                                スプレーでシュシュッ

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アイロンでシュコーっとな                             こちらもシュワーっとな

そして! 糊付け完了だ!

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こっちが20世紀まで大活躍していた、ごはん糊           こっちは今現在活躍ちゅうのスプレー糊

Photo
20世紀糊付け⇒21世紀糊付けへのタイムワープGIF

……どうだろうか。糊付けの効果というより、アイロンかけてキレイなったな。やったね! という感じ。見た目、差がわからない。びみょう。いちおう、ハリは出たかもしれない。


ごはんはお手紙だった

そんな人生初のTシャツ糊付けをしていたところ、郵便物が届いた。

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ASAKUSAの消印だ! (アニメ切手であることは気にしないで頂きたい)   なんと! 二代目河竹新七さんから……!

二代目河竹新七=黙阿弥じいちゃん
1816年~1893年。いまでも上演され続けている『弁天小僧』『三人吉三』『十六夜清心』などを書いたちょう人気歌舞伎作者。天保の改革により江戸三座の移転および芝居関係者に対し猿若町への囲い込みを命じられたため、当時郊外(!)であった浅草寺子院正智院境内に新七さんも転居し以後40年ほどその地に暮らして仕事をしたので、みんなからは「地内の師匠」と呼ばれていたそうだ。「黙阿弥」は隠棲する時に名乗った洒落た(?)お名前。すてき。

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江戸~明治時代なので封はもちろん、ごはん糊!  平成2年に建てられた黙阿弥住居碑は浅草仲見世の1本裏通りにあります

郵便局の手を経てもしっかり封印されていますな。ごはん糊。えらい。

ところで、ウソを吐きました。

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しっかり自分で投函しました                  浅草でスカイツリーと観光客を眺めながら

文書偽造の現場を公開。

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20世紀ごはん糊による封印                  こちらは21世紀テープ糊による封印

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くにゃっくにゃだね                             こんなに均一に薄く塗れて21世紀ってすごいね

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21世紀テープ糊のスキのなさ……! 美麗!

中身は内緒。

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ところで浅草寺境内にある9代目市川團十郎に12世團十郎への献花がされていた(この『暫』像は12代目が襲名した時に再建されたもの)


まとめ;ごはん糊の接着力は21世紀のいまでもなんら問題ない。ごはんはいまでも自信を持って文房具です! ただし、どんどん臭くなるという欠点がある。21世紀糊の安定剤投入は鼻ストレスの軽減に貢献している。
そして自分にはちぎり絵の才能がない、ということがわかった。

Photo_3
舌切りばばあになれず!



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