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2013年5月15日 (水)

第389回公演記録鑑賞会『加賀鳶』

東京千代田区・国立劇場に併設された伝統芸能情報館では「公演記録鑑賞会」というものを月1回ペースで開催しているらしい。この5月は平成元年(1989)3月上演の歌舞伎『盲長屋梅加賀鳶めくらながやうめがかがとび』を鑑賞できるというので、行ってきました。

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国立劇場の裏手にあります

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建物の3階にて鑑賞します

学校の視聴覚室みたいなところで上映。(レクチャー室という名称らしい)
背もたれが座面とつながっているタイプのスタッキングチェアがずらっと並べられていました。

おねだん無料。先着120名。自由席。上映103分休憩なし。
と、あったけど120人以上いたような。担当者の方が椅子を追加で並べていたし、はじまってからもチラホラ人が出入りしていたし。たいへん盛況でした。

年齢層60~70代 男女比5:5
平日金曜の朝10:30からの開催って、だれ向けなんだろう。学生? と考えていましたが、おじいちゃん向けでした。堅気の商売だと半休はとらないと鑑賞できない。第389回ってことは32年くらいこのスタイルなのかしら。今回は歌舞伎でしたが文楽や浪曲や講談もやります。

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あらすじ案内と番号札を渡されます。親切。

『盲長屋梅加賀鳶』
序幕  御茶ノ水土手際の場
二幕目 本郷通町木戸の場
三幕目 菊坂盲長屋の場
     竹町質見世の場
大詰  菊坂道玄借家の場
     加州候表門の場

按摩竹垣道玄および加賀鳶天神町梅吉  5代目中村富十郎
加賀鳶日蔭町松蔵   12代目市川團十郎
女按摩お兼        2代目中村又五郎
加賀鳶春木町巳之助  坂東彦三郎
加賀鳶雷五郎次     3代目河原崎権十郎
おせつ           澤村田之助
伊勢屋与兵衛      2代目助高屋小伝次
お朝            市川右之助

なにしろ平成元年(1989)って四半世紀前の公演記録だから、スターの役者さんらが亡くなられているし、若い。(←だから上演しているのだけど)
現在、お姫様役をバンバンやっている中村壱太郎さんや中村児太郎さんが生まれる前のことだ。光陰矢のごとし。

團十郎が若い。なんだかふんわりされている。ビシバシした松の兄ぃの役なんだけど、育ちの良さが出ちゃっているぞ! やさしげだ。いや、松の兄ぃは実質やさしいんだけども。
伊勢屋与兵衛かっこいいなぁ、とおもったら2代目助高屋小伝次は明治生まれらしい。かっこいいわけだ。座っているだけで威厳あるある。

そしてショックなことがあった。なんと! 蚊帳の場面がない! わお。
死神も出てこない! わお。(←その場面が観られるとおもってワクワク楽しみにしていた。むねん)

通称『加賀鳶』と呼ばれる、この演目。1886年黙阿弥じいちゃん晩年の傑作。
その名の通り、加賀藩前田家お抱えの火消しが主人公……だったはず。
盲長屋=加賀さまのお屋敷が通りに面して窓を持たなかったことからそう呼ばれた。けっして盲目の按摩たちが暮らす長屋のことではなかった……はず。
その加賀鳶の頭・梅吉の女房と、イケメンの巳之助が大の雷嫌いで、夕立の雷に右往左往した挙句、一緒に蚊帳の中で雷が通り過ぎるのを待つシーンが事件のはじまり。
むかし、雷が鳴ると麻製で絶縁効果のあった蚊帳を部屋に吊って、そのなかで蚊取り線香を焚いて空気を乾燥させて、やり過ごす慣習(科学的にあっている)があったので。
しかーし! 「ひとつ蚊帳に入る」と言えば「ひとつベッドに入る」くらいの意味合い(じっさい寝所に吊るものなので。見たことないひとはとなりのトトロ [DVD]をご覧ください)だったため不義密通を疑われる。で、いろいろあって年長の松の兄ぃがビシバシと片付けてくれるのだ。
死神はちょうコミカルなシーンでこれも梅吉&道玄&死神を1人3役でやる設定だった……はず。
5代目尾上菊五郎の初演のみで再演されなかった、と解説に書いてあった。ショック! (無知)
6代目菊五郎が再構成した結果、ほぼ道玄の独壇場になっているなんて。たしかにぜんぶ演ると、この2倍以上時間かかるちょう長編なんだけど。蚊帳の場面、死神……観たかったなり。
(作者はほぼ書物のなかの歌舞伎しか存じ上げないため、こういう時代錯誤がよく起こります)

でも『加賀鳶』なのに加賀鳶は総勢15名による「名乗り」のみとは。巳之さんをもっとだせー! 死神もだせー! お朝ちゃんかわいいー!
もう題名は『按摩道玄』ではなかろうか。いや、だめだ。加賀鳶である松の兄ぃがいないと物語がなんともならぬ。うぬ。作者が勝手に期待していたのとはちがっても、富十郎さんがほんとにおもしろそうに道玄やっていて楽しかったけども。うぬぬ。


ところで、これを書いた黙阿弥じいちゃんはずっと背中を向けている。
梯子段でのぼる二階に上り、そこで梯子を外してしまって、こちらに背中を向けて座り若干ジメジメした薄暗い浅草のおうちでずーっと狂言をまとめておられる。
※あくまで個人的イメージ。人付き合いは悪くなかったらしい。「おれのうちなんざ、芝居にゃあ書けねぇなあ」と言った話が好きです。あと奥さんが思い余って黙阿弥じいちゃんにお金を渡して「これで外で遊んできてはどうか」と言った話も好き。あっさり断ったそうな。


このイメージの原因は黙阿弥じいちゃんのひ孫河竹登志夫著『黙阿弥』

作者はもちろんなんの縁故もないため、歌舞伎座新開場の古式顔寄せ手打式のニュース見てはじめて河竹登志夫さんのお顔を知ったわけだけど、先週亡くなってしまわれた。考察のスタンスが黙阿弥寄りなようでだいぶ引いた立場で無理をしなくて好感度高かった。
河竹登志夫氏じしんはひ孫でも本人に会ったことはないので、ご先祖という表現を使われていた。つまり、これからはじめて黙阿弥じいちゃんに会うわけである。どんな話をされるのだろうか。
黙阿弥じいちゃんに、よろしく。

6月の第390回鑑賞会は18代目勘三郎の『髪結新三』が予定されています。こちらも黙阿弥じいちゃん作。

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