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2013年9月 4日 (水)

国立劇場『第19回稚魚の会&歌舞伎会合同公演』

東京・半蔵門にある国立劇場小劇場へ『第19回稚魚の会&歌舞伎会合同公演』を観に行ってきました。

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緑が濃くてあぜくらが見えにくいですが

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正面入り口に楽屋への地図案内が掲げられていた

ご存じない方のために説明すると(作者もご存じないけど)、国立劇場には歌舞伎俳優を育成する研修所があります。
おれが3月に『隅田川花御所染女清玄』を観て「新造采女(中村芝のぶさん)もきゃわきゃわ♡」とかなんとかキャーキャー言っていた中村芝のぶさんも研修所の第9期生でした~。いいよいいよ~。
で、そんな研修所修了生による『稚魚の会』と一般名題下俳優による『歌舞伎会』の若手中の若手による合同公演が毎年8月? に行われているそうです。
……なんだかよく理解しないで観に行ってしまったことがバレバレですが、楽しかったのでいいのです。

お客層 男女比4:6
年齢層 ちびっこから70代くらいまで幅広
お値段が全席4000円(小劇場とはいえ普段なら1等席に相当するところも)のためか、それとも関係者(ご家族&知人?)が多かったためか、20代くらいの若者の割合が高かったように見えた。席の埋まり具合は、前半6~7割、中盤8~9割、後半6割? と、長丁場のせいか、それとも目当ての出演者がそれぞれあるのか、演目により差が出ていた。全体的にのんびりした雰囲気(客席が)でした~。

タイムテーブル

13:00 雛鶴三番叟 長唄囃子連中

13:21 休憩25分

13:46 修禅寺物語 一幕三場
    第一場 伊豆修禅寺夜叉王住家の場
    第二場 桂川のほとり、虎渓橋のたもとの場
    第三場 もとの夜叉王住家の場

14:54 休憩25分

15:19 上 団子売 竹本連中
    下 俄獅子 長唄囃子連中

15:52 休憩20分

16:12 双蝶々曲輪日記 八幡の里引窓の場 一幕

17:25 終演

時代、内容ともに、みごとに要素もりだくさん。リア充ならぬ歌舞伎充である。
『雛鶴三番叟』ひなづるさんばそう=江戸中期、舞踊、おめでたい系
『修禅寺物語』しゅぜんじものがたり=明治末期、新歌舞伎、鎌倉二代将軍源頼家の悲愴な末路をベースにした史劇系
『団子売』だんごうり=江戸後期、実際に流行った”景勝団子売り”をベースにした舞踊、ひょっとこミカル系
『俄獅子』にわかじし=江戸後期、吉原の風俗をベースにした長唄舞踊、華やかパロディ系
『双蝶々曲輪日記』ふたつちょうちょうくるわにっき=江戸中期、義太夫狂言、世話物人情系

あ~、やっと観た。やっと観たよ! 綺堂物! (歌舞伎における岡本綺堂の作品のこと、今回は修禅寺物語のみ) 綺堂らぶ♡を宣言しながら、綺堂物観たことないんじゃ話にならないからね(戯曲も本にまとめられているので読むことはできる)。これで、あの世があってもだいじょうぶだ。綺堂翁にご挨拶する準備万端なり! ……いや、あと番町皿屋敷と鳥辺山心中くらい観ないとダメかなぁ……いや、心中浪華の春雨も……う~む。半七捕物帳も舞台化されているんだよね……数が多すぎるな。えんえんと綺堂物ばっかり上演してくれないだろうか。してくれないか。

ところで、『修禅寺物語』では、はじまってすぐ、妹娘かえでちゃんの台詞に
かえで「とはいうものの、きのうまでは盆休みであったほどに、きょうからは精出して働こうではござんせぬか。」
というのがある。この台詞をかえでちゃん役の坂東三久太郎さんが言った途端、客席がジワジワ~と笑ったのだ。え、どうしたの? と思ったら、ちょうどこの日、現実のお盆休み明けだった。ああ、そういう。
修禅寺物語には設定があって「元久元年七月十八日」と明記されている(だからずっと虫の音がBGM)。西暦なら1204年。なんで明記されているのかと言えば、頼家公の命日だから。陰暦なのでズレはあるけど、365日のうちで最もふさわしい日に修禅寺物語を観たということになり、それでお客さん笑ったらしい。作者は鈍ちんで気付かなかった。
今回はアドリブではないのだけど、歌舞伎を(あるいは演劇全般を)観るというのは、虚構半分・現実半分でいかないと、役者が楽屋ネタを放り投げて来た時に、ひとりキョトンとしてしまう。歌舞伎なんか「成駒屋!」って声かけてんだから、そういや、それ自体楽屋ネタだし、そういうバランスで成立している。
虚構の世界にどっぷり浸かって我を忘れたい作者みたいな野暮な人間には本来、向かない。そういう奴はひとりで雪月花か花鳥風月(花と月がかぶっている)でも眺めていればいいとおもう。観劇をすればするほど、おれ向いていないんじゃないか、とおもう。

でも、作者の二番目に好きなシーンも観れました~。

夜叉王 「せっぱ詰まりて是非におよばず、つたなき細工を献上したは、悔んでも返らぬわが不運。あのような面が将軍家のおん手に渡りて、これぞ伊豆の住人夜叉王が作と宝物帳にもしるされて、百千年の後までも笑いをのこさば、一生の名折れ、末代の恥辱、しょせん夜叉王の名はすたった。職人もきょう限り、再び槌は持つまいぞ。」
かえで 「さりとて短気でござりましょう。いかなる名人上手でも細工の出来不出来は時の運。一生のうちに一度でもあっぱれ名作が出来ようならば、それが即ち名人ではござりませぬか。」
夜叉王 「むゝ。」
かえで 「つたない細工を世に出したを、さほどに無念と思し召さば、これからいよいよ精出して、世をも人をもおどろかすほどの立派な面を作り出し、恥をすゝいでくださりませ。」
って、泣きながらすがりつく。きゃ~、かえでちゃん。健気~♡ かわいい~♡ すてき~♡ うっとり~♡

ちなみに一番好きなシーンは小説の方にしかない、綺堂自身が頼家公の墓所を訪ね、なにも持っていなかったのでそこらへんに咲いていた野の花を摘んで供えるシーンである。うん、地味好みを自覚しております。

国立劇場は聴こえ方と椅子が個人的に好きなので、居心地がとても良い。でも、この日の空調は寒すぎた。外が、地上に暖房でも入れているのかしら、げー、となるくらい暑く、場内は冷や汗がべったり出るくらい寒かった。ちょうどいい奴いないのか。

 

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