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2013年12月15日 (日)

映画『マイク・ミルズのうつの話』@渋谷アップリンク

2007年アメリカで発表された映画『DOES YOUR SOUL HAVE A COLD?』=『マイク・ミルズのうつの話』を観に、渋谷アップリンクへ行ってきました。

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文化村オーチャードホール前の黄葉

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アップリンク外観                            チラシ

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カラフルなイスが並べられたエレベーターホール

建物の2Fにある「日本で一番小さな映画館」こと40席のマイクロミニシアターにて上映。
ソファーっぽいバラバラの椅子からすきな一脚を選べ、入口には膝掛けが置いてある。
もうコレはだれかの家だ。1Fにごはん食べるとこもあるし。

84分 英語字幕付き
①抗うつ剤を服用していること(薬の服用場面は多かった)②日常生活をありのまま撮影させてくれること(ご自宅とか)③都内在住、を条件に日本のうつ関係のチャットルームにおいて出演者を募り、実際に5人のうつ病のひとに2006年ごろ密着取材したドキュメンタリーです。日本語の音声に英語の字幕が出ることで、なにかがクリアになる感覚があった。気のせいかも。

お客層 片手で数えられる人数(10月から公開ちゅう。やっと行けた)

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『ビューティフル・ルーザーズ』↓掲載のマイク・ミルズ監督の写真。作中では「スーツを着た人間がカメラの前でまじめに話す言葉なんか信じてはいけない」と微笑んでインタビューがおわる(写真にあるスーツ姿でマイクは登場します!)。ナチュラル・パンク。今知ったけど“おしゃれな映像作家”みたいな位置づけをされていたらしい。え!


アーロン・ローズ&ジョシュア・レナード監督作品。余談だけどこちらもおもしろいです。


マイク・ミルズのうつの話、よかった。
日本でうつ病患者が2000年以降急増している理由に英GSK(グラクソ・スミスクライン=製薬会社)によるうつ病啓発CMや広告「DOES YOUR SOUL HAVE A COLD?」が影響しているのではないか、というマイク・ミルズの疑問(←日本での大規模広告はアメリカやイギリスで副作用や依存性をめぐってモメはじめたころ?)を動機に、啓発広告により「うつ」=うつ病という現在の認識が一般化する前の日本社会では精神病発病者は存在を無視され、もっと言えば座敷牢に隠されていた話とか、出演者に対するご家族の割り切れない気持ち、歯切れの悪さとかを静かに見つめながら、でも結局のところ選択の余地もないまま、製薬会社による金もうけ(認知療法やカウンセリングを置き去りにして)に巻き込まれてしまったんじゃないか? という疑念を抱きつつ、ただ、うつ病に真っ向から抗って闘っている出演者たちの姿は可憐だし、けなげだ。

マイク・ミルズは絞り出すような、ちょっと裏返った声でそっと話す。本人のご自宅とかで取材対象者を映しながら、監督が英語で質問をし、日本語に通訳された時にはじめて、あ、マイク・ミルズとカメラマンと通訳さん(日本のプロデューサーさんかも)いたんだ! と気付く。
「GSKがうつネットに出資しているって知っていた?」
「カウンセリングは受けていないの?」
監督の存在感が増したのは、唯一この質問の瞬間くらいで、あとはずっと透明な存在であり続けた。製作者の透明な目を通して見た東京の景色も、登場するうつ病の方々も、すこぶる愛くるしい。

ちなみに、うつ病治療のアウトラインは寛解という状態らしい。

突然、思い出したけど、岡田尊司さんが著作(愛着障害 子ども時代を引きずる人々 (光文社新書)2011刊)のなかで
「夏目漱石、谷崎潤一郎、川端康成、太宰治、三島由紀夫、ある意味、日本の近代文学は見捨てられた子どもたちの悲しみを原動力にして生み出されたとも言えるほどである。(抜粋)」と書いていた。

人類から憂鬱を取り除いてしまったら、いったいなにが残るのか。

笠原嘉さんは著作(退却神経症―無気力・無関心・無快楽の克服 (講談社現代新書)1988刊)のなかで
「しばしばちょっとした、いや相当の苦労に出会うのだが、何とかしのいでやっている。それはそれなりに人間の仕事としてたいしたことだ。神経症の人の苦しさを知る者としては、そう思う」と書いている。

完璧じゃなくても、なんとか凌げるならそれは立派な仕事だと、おれもそう思う。

歴史的には日本社会に精神病患者を現在とは別の形で許容する余地もあった気がする。
江戸時代には“ぶらぶら病”って病があった。←たぶん抑うつ状態のこと。とくに治療しないけど。でも、明治以降、精神病者監護法があったこともあって座敷牢は戦前までけっこう現役だった。←居間のど真ん中に座敷牢のあるお宅とか実在した。(【現代語訳】呉秀三・樫田五郎 精神病者私宅監置の実況

この“監護”から薬物療法への転換が極端だし歪んでいたのかもしれない(ある意味では“無視”と呼べるのか)。
うつ病に限らず、病気の啓発は製薬会社以外から発信されるべきなんだろうか(でも製薬会社プロだし、ほかに誰が?)。

誤解される言い方をすれば、うつ病くらいでおたおたしない社会システムとか一般通念を積み上げるべきだったとおもう。そっと触れる、という動作は苦痛を知る生きものだけにしかできないものだ。うつ病寛解後は人間的にずっと成長するから、うつ病なってやったね、ラッキー♪ ぐらいのふてぶてしい大らかさとか……鷹揚……いまのところ随分キュウクツでギュウギュウでちょっとムリくさいけど。それでも、どうか己の苦痛を他者へのやさしさに昇華できるように。うつ病のひとも、そうじゃないひとも、おれも。

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