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2014年3月21日 (金)

歌舞伎座新開場こけら落『鳳凰祭三月大歌舞伎』

東京・東銀座の歌舞伎座新開場こけら落『鳳凰祭三月大歌舞伎』を観に行ってきました。

1                     意匠は伝統的で素材がピカピカだとテーマパークっぽい

実はひそかに、今春予定されていた七代目歌右衛門襲名披露公演で『籠釣瓶』の八ッ橋を福助さんがやるにちがいないから(←あくまで勝手な希望です)チケット争奪戦に参戦しようと目論んでいたのですが……延期決定! 福助しゃん! にゃあ……!
というわけで公演は変更になりましたが、夜の部『加賀鳶』を観に行ってきました。

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多彩看板と鳳凰柄提灯のズラーッとした感じ。くわえて劇場入り口のにぎわいが楽しい。あと一幕見席(各演目開演1時間前から当日販売のみ)の行列が長い。

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地下の木挽町広場の人口密度も高い              地下鉄・東銀座駅とのボーダー

いま気付いたけど、屋上広場へ行くのを忘れてしまった(エレベーターで行けるらしい)。うっかり。

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3階席からの眺め。かろうじて花道(お客さん着席するとキビシイ)。急勾配なので足元せまいけど、椅子は幅広フカフカで快適。トイレも最新の一方通行システムになった。

お客層 男女比3:7 年齢層 平均すると50代後半 和服&白髪多し 満席

ほんとは作者のような、とくに贔屓の役者もいない・体力もないライトユーザーは一幕見席でじゅうぶんである。今月昼の部の『二人藤娘』なんて800円だ。ちょうリーズナブル。これはきっと縁遠い未成年にバイト代(?)とかで来てほしくて、待っているんじゃなかろうか(行列になっちゃっているけど)。4階だからとりあえずオペラグラスは用意したほうがいいだろうけど。でなきゃ、一生に一度だけ歌舞伎座で歌舞伎観るんなら、桟敷席で観たらいいとおもう。20000円だ。まあ席なんかどこでもいいんだけど。三田村鳶魚によれば、江戸時代の江戸のいわゆる“粋な兄ぃ”=日雇い大工なんかは、その一生に一度も歌舞伎なんて観る余裕なかったと証言している。祝儀をはずまなきゃいけない、お茶屋制だったし。だからこそ“替り目ごとに芝居見物をする”ことがステイタスだったわけで。ちなみに現代のヘビーユーザーさんは“皆勤”と称して、地方ふくめて贔屓の役者さんの全公演おっかけているそうだ。パワフル。

夜の部

一、盲長屋梅加賀鳶 四幕六場 作・河竹黙阿弥
序幕 本郷通町木戸前の場
二幕目 御茶の水土手際の場
三幕目 第一場 菊坂盲長屋の場
     第二場 竹町質見世の場
大詰 第一場 菊坂道玄借家の場
    第二場 加州侯表門の場

天神町梅吉・按摩道玄 松本幸四郎
春木町巳之助 中村橋之助
雷五郎次 市川左團次
日蔭町松蔵 中村梅玉
女按摩お兼 片岡秀太郎
小間使お朝 澤村宗之助
女房おせつ 中村歌女之丞
伊勢屋与兵衛 松本錦吾

二、勧進帳 長唄囃子連中 作・並木五瓶&杵屋六三郎&西川扇蔵
武蔵坊弁慶 中村吉右衛門
富樫左衛門 尾上菊五郎
源義経 坂田藤十郎

三、日本振袖始 大蛇退治 作・近松門左衛門
岩長姫じつは八岐大蛇 坂東玉三郎
稲田姫 中村米吉
素戔嗚尊 中村勘九郎

作品の成立期はちょうど一、二、三の順に明治時代中頃、江戸時代後期、江戸時代中期とさかのぼってゆく(勧進帳は能『安宅』が元ネタなので厳密にいうともっと以前?)。それを21世紀の今やっているという不思議。当時、浄瑠璃作者だった近松のモンちゃんだって、まさか300年後まで上演されるとおもって作ってなかっただろなー、とおもう。

『盲長屋梅加賀鳶』めくらながやうめがかがとび
個人的に、昨年公演記録鑑賞会で蚊帳の場面がすっかりなくなっていたことにショックを受けた『加賀鳶』(←上演当時は七幕物)。カテゴライズすると江戸生世話物だが、書かれたのは1886年(明治19年)である。10年ひと昔と言うなら、江戸時代がふた昔くらい前になったころの東京(=もう江戸じゃない)千歳座で上演された作品である。黙阿弥じいちゃんは1893年(明治26年)に78歳で亡くなっているので“晩年の名作”と言われているが、描かれている江戸市井の人々がほぼ絶滅していたんじゃないかしら、ともおもう。しかも得意の七五調の流麗なセリフ回し。もう二度と戻れない時空への切ない気持ちで書いたり観たりしたんだろうか。……それとも?

おれの敬愛する岡本綺堂翁は、その点について尊敬する黙阿弥じいちゃんの没後、1924年(大正13年)ごろ一種の文句を書いている。
「(抜粋)/歌舞伎の俳優は現代の人物に扮する資格がないかのやうに、いつとは無しに決められてしまつた。歌舞伎の俳優は一種の能役者になつてしまつた。三百年の歴史を有する國劇を保存するのも勿論結構である。わたしもそれに故障は云はない。が、現代の材料をあつかふ資格が無いやうに決められてしまつたのは、かれらの不幸でないとは云へまい。これは見物も惡い、俳優もわるい。作者が最も惡かつた。」(十番随筆「明治以後の黙阿弥翁」より)
ちょう芝居狂で『修禅寺物語』において新歌舞伎の一時代を築いた綺堂に対してですら、“小説家ごとき”みたいな扱いの評を読んだことがある。舞台関係者ちょう閉鎖的。気難しい。そういう方法論で様式を守った、と言われればそうかもしれない。

で、まとめると『加賀鳶』おもしろい。現代人のお客さんが、質屋の丁稚の尻の軽口とかピンと来るだろうか~とか要らぬ心配しつつ。脚本で読んでいると、いくらなんでもご都合主義? 台詞リズミカルすぎ? みたいな心持ちもするんだけど、やっぱり舞台として目前に現れると、おもしろい。そして、お朝ちゃんカワイイ。

ただ2点、気になることがある。

①加賀鳶(=火消し)なのに、なんだか弱々しいな。所作が板についていないんじゃないかしら……いや、そんなひと歌舞伎座の舞台の上にいないはずだろ……?……全体的に重心が高いかも、という結論に達した。
幕末に撮影された、町や村のなんでもないひとたちの白黒写真では「大地を踏みしめています!」感が伝わってくるので、それをイメージして観に行っているおれが悪いのかもしれないけど。“足弱の女こども”みたいな言い方があっただけあって、昔の男たち、ちょう足強だ。電車も車もないし、晴れれば砂ぼこり、雨雪降れば何日間も泥濘だったわけだからタフ。日本橋から箱根まで3日かかるし。そして、なにがそんなに楽しいの? というくらい表情豊かだ。丈のあっていない着物きて裸足で遊んでいるばっちぃ子どもたちですら、はじけるような笑顔で写真におさまっている。唯一、吉原張見世の遊女たちだけ現代人とおなじ強張った表情をしているけど。江戸時代の村人と役者がおなじ所作だったかどうかは不明だけど、もっと大地を踏みしめてもらいたいなーとおもった。昔の人、現代人より小柄で短足だったんだけどさ。

②上演時間は当初と比べれば、だいぶコンパクトになって1時間半くらい。休憩なしで進行するんだけど、客が幕の長さに飽きはじめるってゆう他の伝統芸能どうようの状態であった。モゾモゾしたりペチャクチャしたり、トイレに立ちはじめる。足元せまいので列中央あたりの人の途中出入り(勿論戻ってくる)は惨事。遊びにきているんだから我慢することないけどさ。

そういう状況を目の当たりにすると、演る方も観る方も、もうだいぶ無理があるのかもしれないとおもう。予想以上に歌舞伎は瀕死の熱帯魚のようだ。なにを歌舞伎と呼ぶかによるけど。そういえば、能役者さんも代々伝わる衣装が、とくに若い人たちにとって丈が短すぎて難儀していると語っていた。あと外国人観光客が歌舞伎座で一番驚くことは、日本人がイヤホンガイドつけている点らしい。

西欧工業文明がダメにした地上の文化の数は、あらゆる戦争で亡くなった人数を上回る。
ただ文化は、べつにダメになったらなったで新しく作ればいいだけだ。歌舞伎がどういう歌舞伎になっても、近松のモンちゃんだって、黙阿弥じいちゃんだって、岡本綺堂翁だって、怒んないとおもう。……ホントに聞いてみたら怒るかもだけど。

全席幕ごとのバラ売りにしたらどうだろう。システム負荷と案内係の人件費が上昇して、飲食の売り上げは低下、グッズの売り上げは上昇、新幹線の指定席みたいにダブルブッキング率もあがりそうだけど。「わたしは切まで買いましたよ!」みたいな。どう努力したって、いまから江戸っ子にはなれないんだし。

↑というようなことをウジウジ考えながら観ていましたが、そういう風に楽しんでおります!

『勧進帳』かんじんちょう
長唄、三味線、鼓、笛! もう松(鏡板)を背負って長唄囃子連中が並んでいるだけでワクワクする。強力姿に身をやつした義経(藤十郎さん)、静かに控えているあいだ誰か若い人がやっているのかとおもって「???」ってなった。なんだ、あの楚々とした清潔感は! は、八十代!? ひえ。かっこいい。

『日本振袖始』にほんふりそではじめ
岩長姫(玉三郎さん)は絡繰り人形なのかな、というくらい安定した平行移動が美しく、また妖しさみたいなものが(八岐大蛇だから)増幅されていた。正体をあらわした後の、大蛇の分身たち(もちろん7匹!)がカワイイ♡
そして素戔嗚尊(勘九郎さん)が花道から登場した時にお客さんがこの日一番キャーキャー盛り上がっていた。素戔嗚尊キャラがすきってこと……? って一瞬まちがえたけど、人気高いでした~。

やっぱり、ぜんぜん瀕死の熱帯魚じゃないかも。


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パンフレットは1300円、紅白玉入りたい焼きは200円、ロッカー100円、おべんと1000円~、ブロマイド500円、他にもおみやげ色とりどり。中村芝のぶさんのグッズないかなーって探したけど見当たらなかった。むねん。

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