« TOMOVSKY@水戸ライトハウス | トップページ | 皇居乾通り③ »

2015年12月10日 (木)

『Battle field』@新国立劇場

ピーター・ブルック(1925年ロンドン生まれのすてき無敵なおじいちゃん♡ ではなく現役演出家・巨匠)の最新作『Battle field』を観に、東京・初台の新国立劇場(中劇場)へ行ってきました。

2012年の記事⇒『ピーター・ブルックとシェイクスピア展』@早稲田大学
2013年の記事⇒シルヴィ・ギエム×アクラム・カーン『聖なる怪物たち』
2014年の記事⇒映画『注目すべき人々との出会い』@吉祥寺バウスシアター
         ⇒映画『ピーター・ブルックのザ・タイトロープ』@KAAT
                   ⇒『驚愕の谷』東京芸術劇場

1_2
クリスマスリースが飾りつけられた劇場入り口

2_2
クリスマスツリーが飾られたホワイエ

もっと和風の季節デコレーションでもいいんじゃないかしら、とおもった。

3
まだ入れなかった

お客層 男女比 5:5 年齢層 小学生くらいのちびっ子から70代くらいまで・平均すると50~60代くらい
半額「U-25」チケットが当日引換だったせいか窓口に列ができていた。開場ちゅうの客席はけっこうにぎやかで2Fは使わず、中劇場の1F800席程のみ使用。この日、客電が暗くなって開演後もバラバラお客が入ってきていたんだけど、めずらしいな。プロみたいなお客が多い舞台公演でマレなゆるさ(なんらかの会員や関係者・研究者で常連だらけ)。どこか路線とまってた? 鉄道会社しっかり~☆ でもピーターはん、演劇はインテリだけのものじゃない、多彩に混じり合っていればいるほどいい、という方なのでゆるい感じのほうがいいかもな。

※紀元前から語られているマハーバーラタにもネタばれという概念があればネタばれです

『Battle field』 70分(休憩なし) 英語上演・日本語字幕付き
ジャン=クロード・カリエール(1931年フランス生まれ・愛書家界のレジェンド)脚本
ピーター・ブルック&マリー=エレーヌ・エティエンヌ(フランス生まれ・1974年から40年以上ピーターの創作パートナー)翻案演出


舞台の元ネタであるマハーバーラタ(インドの超長編民族叙事詩)の邦訳本さえ未読了の作者が説明できることは少ないのですがひとことで言えば、バラタ(バーラタ)家における骨肉の争い=超絶人数多めお家騒動、がおわったあとの日常生活(神話寄り寓話挿しこみ)です。Battle field=戦場だけど、いままさに戦争まっさいちゅう☆ ではなく終わったあと、首と胴体のばらけた屍で埋めつくされた戦場に生き残った勝者・ユディシュティラ(パンダヴァ家5人兄弟の長子)と盲目の老王・ドリタラーシュトラ(全滅したカウラヴァ家100人の王子のパパ)がこれからどうするのか問題である(たぶん)。

この8巻目の中途で邦訳者のかたが亡くなったことでも知られている原典訳全集(未完)

あけっぱなしの舞台に四角い箱(スツール)が2個、奥に転がっている2mくらいの棒に節が見えるので竹? 手前には色とりどりの布(ストール)が落ちている。置いてある、というよりただ落ちている無造作さ。上手にジャンベ(西アフリカ地方伝統の胴長太鼓)と椅子が1つ。字幕を映す白いスクリーンは舞台上部。いちばん奥の壁を照らす血のように鮮烈な赤から天地にかけてのグラデーションで舞台床あたりで黒になる。だからきっと、ぜんぶ赤なのだろう。
音楽はジャンベを両手で包むように打つ土取利行=トシさんが上手位置でひとり奏でる。
登場する役者は4人、男性3人:女性1人。ぜんいん裸足。ゆったりとしたシャツにゆったりとしたパンツ姿。いろとりどりのストールを巻いたり、竹杖を持ったり置いたりすることでそれぞれいくつものキャラクターを演じる(数えられず、むねん)。

冒頭は「The War is over」(うろ憶え)といったセリフをはじめ、ドリタラーシュトラとユディシュティラによって戦争=殺戮がおわったことが語られる。安堵も希望もなく疲弊し、後悔と苦悩が襲う。さらに母クンティー(キャロル・カレメーラ)により馭者の子カルナ(カウラヴァ側の弓の名手)はじぶんが結婚前にマントラで呼び出した太陽神との子=長男ユディシュティラにとっては異父兄であったことを告げられる。
ユディシュティラ「わたしは兄を殺し、その死を喜びさえした」(うろ憶え)
かなしい。開戦を止められなかったことではなく、兄弟が殺しあったことではなく、屍の多さではなく、ただ戦争がおわってしまったことがかなしい、とおもった。
で、ユディちゃん(ジャレッド・マクニール)とドリちゃん(ショーン・オカラハン)が為政者として戦後を治めたり、心の平穏を求めて森へ出家&断食したりするわけですが(ざっくり)、差しはさまれる寓話の“口が減らないヘビ”がラブリー♡ 猟師の息子を毒で殺した犯人として拘束されたヘビ(ジャレッド・マクニール)が目をパチパチぱちぱちさせて反論する。
ヘビ「たしかにおれの毒で死んだわけだけど、それは運命の一因であって原因じゃない。おれは悪くない。ほどいてくれ」(うろ憶え)
ほかにも王宮に積まれた黄金をカラダに塗ろうとして上手くいかず、ユディちゃんに見つかったマングース(エリ・ザラムンバ)もラブリー♡
ユディシュティラ「これも、これも持って行け。貧しいひとびとに分けてあげるんだぞ」(うろ覚え)
いろとりどりのストールをぜんぶカラダに巻きつけてもらってご満悦のマングースが向かった先は前列客席。
マングース「マダム! マズシイ? ビンボウ?」
1枚ずつ貧乏人どもに分け与えてやった☆
マングース「ムッシュー! ビンボウ? NO! He is a rich man!」
ケモノども、かわいいな。こういうキュートな動きも抜群にかわいいんだけど、4人とも身体表現力が驚異的に優れていてピタッと静止する場面とか、見ているおれが狼狽した。もちろん生きて呼吸して鼓動を打っているので、静止した演技、静止したフリ、のはずなんだけど静止しているようにしか見えなかった。江戸時代以前の忍が目の前にいたらこんな感じだろう、とおもった。いるのに、いない。
いろいろあって(ざっくり)、ラストはトシさんの彩り豊かなジャンベ演奏にスポットが当たるわけですが、高速だったり派手な音よりもピアニシシモ(小さい音)を平然を打っている姿を見ると、おれなら手か指先が攣りそうだ、とか余計なことばかり考えちゃう。その太鼓のリズムもおわって明るいままの舞台が静かになったとき、客席のだれかが拍手をしようとするのと同時。
別のだれかがくしゃみをした。
さらに沈黙。30秒か、3分か、3000年かもしれない。たぶん幕引きだけど(そもそも幕使わないからおしまいの合図なんかない。自分で判断する必要がある)、せっかくなのでおれも沈黙しておこうとおもった。この従順な静寂がどこまでつづくのか。

ピーター・ブルック「(抜粋)人は時々私に馬鹿みたいな質問をする。『芝居で世界を変えられると思いますか?』『まさか』と私は答える。」
常田景子訳『ピーター・ブルック最新作バトルフィールドまでの創作の軌跡』


4

« TOMOVSKY@水戸ライトハウス | トップページ | 皇居乾通り③ »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1535230/62752362

この記事へのトラックバック一覧です: 『Battle field』@新国立劇場:

« TOMOVSKY@水戸ライトハウス | トップページ | 皇居乾通り③ »

無料ブログはココログ