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2016年9月24日 (土)

いしいしんじ講演会@神奈川近代文学館

そういえば、最近いしいしんじさん(1966年大阪生まれ・作家)の新作をぜんぜんチェックしてない。


愛読は『東京夜話(旧題・とーきょーいしいあるき)』(1996年)と『プラネタリウムのふたご』(2003年)

最後に読んだ新作は


『ポーの話』(2005年)……だったかなー。

ずいぶん長くぼんやりしてたもんだ。気づいた時点の最新作を購入しようした矢先、


短篇集『海と山のピアノ』(2016年)

横浜・山手にある神奈川近代文学館で三崎港(神奈川県三浦市)を舞台にした書き下ろし小説『港、モンテビデオ』について、いしいしんじさん本人が講演会+『その場小説』をやると知った。


『港、モンテビデオ』(2015年)

ああ、これはもう「この作品を読んで講演会に行け☆」とゆうことなんだろな。文字の神さまだか港の神さまだか、復讐の女神たちか死神たちか、なんかそうゆうのが。とゆうわけで最新刊買うのは先延ばしにしてコチラを読んで行ってきました。

1
みなとみらい線元町・中華街駅の6番出口(アメリカ山公園側)はじめて利用した

駅ホームが地下4Fで改札口が地上1F、6番出口は4階建物のうえ地上5Fに相当する屋上公園。マリンタワーに手が届きそう(錯覚)。
さらに坂道をテクテクのぼって、港の見える丘公園へむかう。

3
まず「愛の母子像」チェック

40年近く前、1977年9月27日正午過ぎ横浜市青葉区(当時は緑区)の米軍機墜落事故により亡くなった家族の慰霊碑。ペットボトルの水と鉢植えでお花が供えられてた。

5
つぎに「コクリコ坂の信号旗」チェック(奥にみんながだいすきなキリン)


『コクリコ坂から』パッケージにも描写

当日の横浜港は、台風10号がゆっくり本州に近づいて不穏な空気いっぱい☆ 見ての通りの空模様でした。

7
円柱と四角をつないだ建物

さっそく企画展『絵本作家・西村繁男の世界展』を観てまわる。


これらの原画きれいだった

『絵で読む広島の原爆』のラフスケッチ(だったかなー)に書き込みがあって小さく「羽が焼けて飛べないスズメ」とあったのが強く印象に残った。もう企画展だけで満足だったので、このまま帰ろうかと一瞬まよった。

9
講演会は展示館2Fホールにて

お客層 男女比 3:7 年齢層 平均すると50~60代? 記憶あいまいだけど落ち着いた感じ
定員220名とゆうプラネタリウム型のホールは明るくロマンティックな意匠だった。

※ネタバレちゅうい

なんの前説もなく(たしか)、いしいしんじさんご本人がローリング・ストーンズ柄(?)の半袖シャツにハーフパンツ姿で舞台袖からひよっと登場された。
いしいさんご本人の第一印象は「華奢だな」と「アンニュイだな」である。
そして三崎に10年くらい住んでいた件に触れ
いしい「(じぶんでは)神奈川県民ぐらいにおもってる」と語った。
お、いしいさんの出身地は大阪とゆうことになってるけど、もはや神奈川県のものだ! 大阪・京都、ざまあみろ☆ (ウソ) ※とくべつ京阪地域に恨みはありません。
プロフィールに「出身地は大阪、母港は三崎」って加筆したらいいんじゃないかしら。
それから近況報告として「鮭児文学賞」の高級なサケと「肉の会文学賞」の高級なお肉をいただいて美味しかった、とのこと。最近の文学賞は食材支給がスタンダードになったのだろうか。(ちがう)

①その場小説
いしい「お遊びのつもりで」とゆう『その場小説』制作からスタート。その場で紙に物語を書きながらご本人が即座に読み上げる。タイトルが『港』と決まっていたので三崎の話だった。
作者、いちおう京急・三崎口駅には用事で行ったことがあるけど、キャベツ畑か大根畑がなだらかな斜面に広がり、海が見えなかったおぼえしかない。魚も食べなかったしな。むねん。

そういえば制作ちゅうに最前列の席から可愛らしーお顔がピョコピョコのぞいてたので、いしいさんのご子息かご親類のキッズだろうな、とおもってたらあとで正式に紹介があって(時系列としては乱入のほうが先だった)、はたしてご愛息であった。



※ココでは便宜上、幕末の八王子のヤクザに倣って「若旦那」と呼称します。

休憩をはさんで実際に三崎港の路地や階段やお店や住んでた家屋といしいさんご本人が登場するプロモーションビデオが上映された。音楽は民謡「三崎甚句」(うろ覚え)。
ふたたび休憩をはさんで『港、モンテビデオ』制作経緯についての話。

②作品制作経緯
2008年ごろ いしいしんじさんの小説×大竹伸朗さん(1955年生まれ・美術家)の装画で作品をつくってもらえないか、と出版社から打診を受ける
画を見て小説を書けないいしいさんと、小説を読んで画を描けない大竹さんは「できない」とおもうがタイトルだけ一緒に考えてそれぞれで作品をつくれば可能ではないか、と話がまとまり、いしいさんは「港」、大竹さんは「モンテビデオ」を提案する
※モンテビデオ:南米ブラジルとアルゼンチンのスキマにあるウルグアイの首都、貿易港。
その後、いしいさんが当時居住の三崎でお世話になっていたノブさん&ミチヨさん夫妻にとってモンテビデオは宿縁(因縁)の地だと判明する
数ヶ月後(1週間後?) 大竹さんから「100枚くらい描いた♪」とゆう電話をもらい、いしいさん焦る
2009年ごろ いしいさんの小説完成、大竹さんは300枚(?)くらい完成。しかし、プロダクトについてアイデアが散らかりどうしてもまとまらず作業が停滞する
2010年ごろ 大竹さんが「だめだ、流れがわるい」と「解散」を宣言。いしいさんが三崎から転居する
2011年3月 東日本大震災が起き、海で亡くなった船員たちの話なので出版を見送る
2014年ごろ(?) ノブさんが病床に伏したと連絡を受け、自費出版でいいからとにかく完成品を届けたいと奔走するが間に合わず
2015年8月 河出書房新社より『港、モンテビデオ』出版

作者はなにしろファンタジー小説とおもって読んで来たため、ほぼエッセイであることが判明して、ちょっと引く。
さらに登場人物である「ミチヨさん」(のモデルになった方)が会場にいらっしゃることも判明して動揺する。
でも、きちんとまとめ髪にした女性の後ろ姿が視界に入って、「ああ、ミチヨさんだし、ヴァージニア・ウルフだ」とちょっとホッとした。
この小説、ノブさん&ミチヨさん夫妻のみならず、いろいろな実在の人物が登場するんだけどヴァージニア・ウルフ(英作家・1882‐1941年)にはこれといった思い入れはないし、パブロ・ネルーダ(智詩人・1904‐1973年)の作品を読んだことがないし、アルフレッド・ウォリス(英画家・1855‐1942)がだれだかわからないし、とゆう状態の作者にとってはみんなキャラクターであり声であり記号なので正直、事実に即してるかどうかは埒外なんだけど、作ちゅうに登場する展覧会でさえ日付を1週間(10日だったかな)ほどズラしただけで実際に開催されたものであることも判明する。ひっ、もっとズラして! とおもった。
ただ、物語の最後で「おれがなんとかしなきゃ!」みたいな謎の使命感がにじみ出てるように感じたんだけど、ああ、実体として船員たちを感じてたゆえなのか、とおもった。

いしい「なんなんだ、これは、と」
制作過程における偶然の一致について、なんどもいしいさんは繰り返した。そしてご自身について「チューブみたい」と表現した。
困ったような顔で話してたため、いまでも病床のノブさんに完成品を届けられなかったことを思い出すのも話すのもつらいのかな、とおもった(それはつらいだろうけど)。が。
京都のワークショップでクレイジーケンバンドの横山さんに会ったさい、若旦那がミニカーコレクションを自慢したら「こうあってほしいとイメージした通りのリアクションで」横山さんが応じてくれてやさしいひとだ、とゆう話をしたときにもおんなじ「困った顔」をしてたので、ん? 考えながらしゃべるとああゆう顔になるクセなのかな、と思い直した。
でも、どうなんだろう。偶然が一致するとつらい? 文字と現実がつながると……うれしいよね? ちがうのかな。不思議だ。 

作者は小説を読んでると「ココだけ浮いて見える」一文があるんだけど、
岡本綺堂翁の『半七捕物帳』なら「いくら正直でも慾のない人間はすくない。」
宮部みゆきさんの『ここはボツコニアン』なら「スケベじゃない男なんていない!」(原文も太字)
ロックであり、魂の叫びである(べつにちがうかもしれない)。



『港、モンテビデオ』のなかで浮いて見える一文は「マカロニウエスタンみたいな棺桶」である。これが最重要キモだ(作者がかってに認定)。
この表現は実際にノブさんご本人がいしいさんに語ったものであることも判明した。! センスある☆ いしいさんはノブさんに原稿料を払ったほうがいい(この小説は書き下ろしなので稿料は発生しない?)。

③質問タイム
質問「さいきん読んで、おもしろかった本は?」


2冊紹介されたうちの1冊は『ガケ書房の頃』(だったかなー)

ちなみに質問タイムの有終の美を飾ったのは若旦那である。
若旦那「そのシャツは、どこで買うたの~?」
大竹さんの「解散」といい、ノブさんの「マカロニウエスタンみたいな棺桶」といい、若旦那といい、いしいさんの近所は言葉に破壊力のあるヒトが多いな。

講演会まとめ:「その場小説」+休憩+ご本人出演プロモーションビデオ上映+休憩+『港、モンテビデオ』制作経緯+質問タイム+(サイン会)=120分くらい

今日はじめて知ったこと:いしいさんは若旦那(ご愛息)に大人気☆

Q
表紙と任意の1ページ分だけ記念に持ち帰り可

文学館の外に出て、いよいよ泣き出しそうな不穏な空模様だなー、と見上げながら、さっきのいしいさんの「困った顔」、ものすごく見覚えがあるとおもったら『プラネタリウムのふたご』の「泣き男」にそっくりだ。とゆうわけで、やっとつながった。

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