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2022年2月11日 (金)

シティーハンターが緑色な件

※ややネタバレの可能性があります。35年前に解禁済みだけど、これからアニメ視聴予定の方は以下スクロールしないことをオススメします。

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念のため、緑色のお写真をお届けしております





2022年1月、はじめて『シティーハンター』(1987年)のアニメをみた。
この作品、コメディだったのか(けっこう驚いた)。
かってにハードボイルドアクションと思ってた。銃もアクションもあるけど。そして香さんはいわゆるヒロインなのかと思ってたら、100tハンマー女だった。なんか色々ちがった。香さんは獠のお母さん・お姉さん・妹(弟)・娘・マネージャー・ファンみたいな6重以上の役割を一身に背負わされてるのが不思議で、原作者の北条さん、香さんのこと嫌いだったのかな……? と最初思った(アニメ制作時にキャラクター設定を変更してなければ)。距離感が近すぎてよくわからない。まだ見てないけど『エンジェル・ハート』(2005年)は香さんの事故死ではじまる物語らしい。何故さらに加重……!?
でも第40話「もっこりパートナー!依頼料はシャワーの後で」(今読むとすごいタイトル)の女スイーパー・彩さんが、香さんを褒め殺す場面において
獠「あらー、のせるの上手いこと。おれも覚えとこ」とゆうセリフが独白される。
つまり「獠は無自覚なんですよ」とゆうことがあえてはっきり描写されたのである。こわー(激賞しております)。これ作ったひと相当性格悪いか抜群にクレバーかド天然なんじゃ…………、ド天然なほうに五千円☆ たぶん最初から香さんの立ち位置はヒロインとゆう類のものではなく、「獠のアキレス腱」=唯一致命的な急所および身体の一部だったとゆう結論に(にぶい)。2人の関係性が最高に重い(激賞しております)。
そうか、このひとが矢吹さんの理想のひとなのか。いまのところ無自覚風来坊に見えるけど
「あんなに男らしくてかっこいい人この世にいないもの!!」とおっしゃってた。難儀じゃけえ。


『きのう何食べた?』6巻(2012年)の話をしております

そして、気づかなければよかったことがある。
絵、うまいなー。
気づいてしまって失敗である。のんびり楽しむ気で視聴始めたのに「いまのカット」「さっきの色」と戻って繰りかえし同じシーンを凝視したもんだからぜんぜん進まないし、眼輪筋&側頭筋がしびれてきた。シティーハンターはこの後2・3・'91・エンジェルハートと続くのに、まだ1年目しか見れてない。
絵がおしゃれ。おれ漫画アニメみて下手だなんて感じたことがないのと同じくらい、うまいとか考えないのに(全員超うまいよ)。人体描写の安定感もいいけど、背景がどんどん精彩になってく。「マイシティーだ」とか「コクーンタワー(2008年竣工)はおろかパークタワー(1994年)も都庁舎(1990年竣工)も存在しない新宿、新鮮だな」とか感じてる内はよかった。どんどんターコイズグリーンもしくはターコイズブルーに染まってくのである。画面の8割方緑色。おしゃれ。
背景はおもに獏プロダクションとスタジオ・イースターで、美術監督はそれぞれの代表・宮前光春さんと東潤一さんである。
エメラルドグリーンとセルリアンブルーのポスターカラー(セル画のほうは塗料)在庫が余ってた可能性を疑うぐらいターコイズグリーンもしくはターコイズブルーである。
夜の道路と壁、夜のビルのガラス窓、公衆電話に照らされた白い服の陰、日中のビルの陰影、日中のジャケット裏、晴れた日の雲の陰、獠の事務所の壁の陰影、和室の襖の陰影、カーテン、扉、床、水、香さんや登場人物の服の色、そして獠の下着までターコイズグリーンもしくはターコイズブルーである。
なんておしゃれ。せっかくなのでもう1度言おう。おしゃれ。
べつに緑色入ってればおしゃれ、とゆうことはない。彩度の強いトーンのなかにターコイズグリーンが陰影のグラデーションとして入るから全体が華やかである。見落としてなければ色彩設計のクレジットがないようだけど、これはサンライズ界隈にドラクロワ(巨匠)がいるのでは?

ウジェーヌ・ドラクロワ(1798~1863年):色彩の魔術師、ロマン主義の帝王、近代絵画の祖とも称えられる。24歳のサロン初出品『ダンテの小舟』は緑色(だけじゃないけど)の入れ方が革新的だった。演劇性の強い構図・ポーズと強烈な色彩表現は賛否両論あり、非難は「やりすぎ」「くどい」みたいなものだったらしい。対立軸が同時期にサロンで成功してた新古典主義最後の指導者アングル先輩である。どっちもフランス国家が滅亡するまで手放さない巨匠連中と言えるのでどっちでもいいと思う。ドラちゃんは巨匠のなかではデッサンは不得手だったとか。超の付く愛書家。

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ドラクロワ『ダンテの小舟』1822年

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ドラクロワ『民衆を導く自由の女神』1830年

ドラちゃんの作品ではこちらの方が有名かと思う。

ルーヴル美術館パブリックドメイン(対応言語は仏英)
「Delacroix△Eugène」もしくは『Dante et Virgile, dit aussi La barque de Dante』『La Liberté guidant le peuple』

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たとえば獠のジャケット裏の表現、ブルーグレーが陰ならターコイズグリーンは反射か透けか

背景だけでなく、ジャケット裏のターコイズグリーンがおしゃれ。最初は夜の人工灯の下方向からの反射を表現してるのかと思ったけど、日中でもこの色味が使われる。3・4クールのオープニング映像では正面からの照明でブルーグレーである。夕日のなかのジャケット裏は暗灰色である。うーむ。生地が透けてる可能性ある? 1・2クールのオープニング映像ではネオン灯の反射として入れてるように見えるけど。うーむ。

そもそも犯人様は北条さんである。


1986年ジャンプコミックス第1巻・2巻(ネット上の書影で申し訳ない)の表紙絵

既に1巻からおしゃれ。作風を「夢のような」と評されたシャガール(1887~1985年)に通じる多幸感あふれる色使いに白抜きの影(反射?)、『CITY HUNTER』のフォントがターコイズグリーンである。
そして2巻! やっぱりおしゃれ。彩度の強い髪色肌色にシャツの陰はターコイズグリーン。これだ! アニメは北条さんのカラーパレットに忠実にさらに派手やかに結晶化したようだ(たぶん)。コミックス背表紙もネオンカラーでカラフルである。360度おしゃれ。画集の再販もしくは新発売予定ないかしら。そういえば漫画本=カラー印刷って減法混色か、カラー原稿はもっと発色がすごいのでは! 

ところで第27話‐第51話オープニング曲「ゴーゴーヘブン」作曲大沢誉志幸/作詞銀色夏生がはじまって、それも驚いた。子どものころ手にした本が音楽に……そのものじゃないけど、ソニーが1番トッポい頃の(※かってなイメージ)空気これかー。


銀色夏生『GoGoHeavenの勇気』1988年

まだトモさん(カステラ)はいない頃だろうか。TOMOVSKYも緑色で影を表現するのが巧みだった。

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TOMOVSKY『Illustrations1992~2007』

P53に「『影で光を表現せよ!』ってキリコの絵に言われて」との一文があり、イメージソースにキリコの名を挙げてる。

ジョルジョ・デ・キリコ『モンパルナス駅(出発の憂鬱)』1914年ニューヨーク近代美術館
エドワード・ホッパー『夜の散歩者/Nighthawks』1942年シカゴ美術研究所

↑それぞれ都市を舞台美術のように描いた作品と、夜の都会で人工灯によって浮かび上がるカフェを描いた作品。説明したかったけどパブリックドメインになってなかった……どちらも緑色を使った都市の陰影(光)表現が共通する。
ドイツのシュルレアリスム画家エドガー・エンデ(1901~1965年)の作品は題材が神話的で都市ではないけど、光の表現は共通するだろうか。

1953
エドガー・エンデ『窓と十字架』1953年(床の赤は血痕なのか)

緑色の魔法使いたちのキーワードは都市の舞台化と演劇性、そして一瞬の静寂だ。おしゃれ☆

で、1年目みおわったタイミングで『劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>』2019年をみた。てっきり公式から最新版のターコイズグリーンが供給されるのかと思いきや……、緑色じゃない! ショック!
2018~2019年世界同時多発的に突如はじまったシティ・ポップ(音楽ジャンル)ブームにこたえるために制作したわけじゃないのか……。
ぶーぶー、出し惜しみするな。シティポップ! シティポップ(美術ジャンル)!
35年前の作品をたった10日前にみたやつなんかに言われたくないとは思う(おれならヤダ)。そして依頼人・亜衣ちゃんの瞳の色を際立たせるためにその他の緑色を抑えたならしかたない、、、けど、「きれいだけど、薄いな」とゆう印象だ(おもしろかったし音楽もよかったし『キャッツ・アイ』はじめてみた)。

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と、いう差なんじゃないかと考えてる。左は手前からスポットライト、右は日中(自然光)店内の場面だから光の加減は正確だけど、左は彩度補色対比、右は輝度(明度)対比に重点を置いた色使いと言える(たぶん)。
描き手のセンスや技術的なことじゃなくて、実際の景色(見え方)変わったんじゃないか。
2010年以降切り替え普及したLEDに照らされる夜の新宿に緑色は少ない。時系列では歌舞伎町一番街アーチがLED電球に更新されたのは2013年。1986~1993年青色LED発明実用化⇒2014年ノーベル物理学賞。
色温度としてたき火・蝋燭1800K、白熱電球2400K、電球色LED3000K、満月4000K、昼白色LED4000~5000K、LEDは火傷の発熱をしないのはいいけど光エネルギーが強く(ブルーライト)直進性があり、点の光をまぶしく感じる。対してネオン灯は全方位に広がるけど、高電圧で消防への設置届出が必要なうえガラス管が風水害で割れる。そりゃLEDネオンサインに更新するよ。光環境工学を勉強してないのでこのへんでやめにしたい。
とにかく明るい、昼も夜も。で、絵も明るく(輝度高く)なったんじゃないかしら。
それにしても配信1年目分だけデジタルリマスターなのだろうか、35年前の映像とは思えない鮮やかさにほれぼれする。冴子さんのリップのフェアリーピンクおしゃれ。

もう1つ小さくショックだったのは、獠の事務所兼自宅が1987年時点ではラグの上にベンチ型のダイニングテーブル、インダストリアルデザインのペンダントランプ、暖炉付きでおしゃれだったのに、ずいぶん生活感のあるスタイルに更新されてた。バルコニーとカーテンボックスあるとなんかちがう。アーチ型窓にカーテンつけないのがよかったのに……、しかし打ち込みタイルの地上6階立て建築は3.11でダメージを受けたのかもしれない。ならしかたない。

そんなおしゃれで緑色な作品を制作された方々だが作画監督にいのまたむつみさん、神志那弘志さん『吸血鬼すぐ死ぬ』、原画に高橋久美子さん『桜蘭高校ホスト部』、制作進行に渡辺信一郎さん『カウボーイビバップ』の名前がある。どれぐらいすごいかと言うとアニメライトユーザーのおれが認識できるなんてすごい。

おれ、12月まで秋アニメ『吸血鬼すぐ死ぬ』を「色使い、おしゃれだなー」と思ってみてた。35年前から夜の都市を描くのが得意な方が監督だったことが今判明した。
具体的には第3話『出世街道転落道』のヒナイチちゃんが屋上に佇むカット(満月がターコイズグリーン)と『バカ騒ぎ退治人ギルド』でジョン君がギルドマスター父子に手土産をお渡しするアイキャッチ(紙袋がターコイズグリーン)がイチ押しです。


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背景に練り込まれた赤も、雲のターコイズグリーンもいいけど、照明の光と影の境界のデフォルメラインがおしゃれ☆

眼球は可視光線の受診臓器なので闇は受診できない。視界の闇・影・暗がりはなんなのかと言えば、脳の補正である。脳(臓器)が「光が多い、光が少ない」で暗く塗りつぶした幻影。夜空が黒っぽく見えるのは、星光と星光の間を塗った臓器のせい。大事なのは光の強弱の差で、眼球に届く光刺激が弱いほど輪郭は曖昧に感じられる。で、夜の都市の境界線のぼんやり感を強調したのが上絵のデフォルメライン(たぶん)。

60歳を前に中途失明したボルヘスの感覚では、光刺激のない世界は真っ暗闇ではなく常に薄明だったそうだ。

ボルヘス『七つの夜』1977年の講演より

ビルの外観だけでなく、事務所の壁もバーの店内も警察署内もぜんぶ陰影がギザギザなのおしゃれ☆ 『吸血鬼すぐ死ぬ』界隈にラ・トゥール(1593~1652年)がいらっしゃる。

Le-tricheur
ジョルジュ・ド・ラ・トゥール『いかさま師』(ダイヤのエース)1635~1638年

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ジョルジュ・ド・ラ・トゥール『クラブのエースを持ついかさま師』1630~34年頃

ダイヤのエースが見たければ仏パリ・ルーヴル美術館、クラブのエースご希望なら米フォートワースのキンベル美術館☆
現実にはどうがんばっても影はこうならない件で有名な絵。

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カラヴァッジョ『トランプ詐欺師』1595年

壁の陰影という点ではカラちゃんのほうかもしれない。右人物の衣装は指塗り。

キンベル美術館コレクション


色彩設計色指定仕上げ検査は今野成美さん、美術監督は吉田ひとみさん、背景はスタジオじゃっくとK.Jstudioだ。カラちゃん……☆

派手な色使いの舞台背景に飾り立てた衣装の登場人物たちが繰り広げるドタバタコメディとダンス、手前にはオーケストラピットでジャズが演奏される。という華やかな舞台だった(心象風景)。導入部のピアノ、クライマックスのサックス&トランペット(っぽく聞こえる音パート)、吸血鬼登場曲(あるいは御真祖様のテーマ)のコーラスもかっこよかった。2期愉しみだ。


まとめ:カムバック! おしゃれターコイズグリーン・シャドー!

Citypopguys
ネチネチ書いたけど描けはしない、ので絵のうまい方々にかってに期待してる

記事中で16回「おしゃれ」と言っています。

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