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2023年8月27日 (日)

フンコロ騎士とスカラベ

軽い気持ちで始めたゲーム『Hollow Knight』が虫好き(おれ)の琴線に触れる内容だったので、事細かく説明して絶賛したい。

※この記事はインディーゲーム『Hollow Knight』のネタバレを多分に含みます。これからプレイ予定のかたは以下スクロールしないで、大冒険へ飛び出すことをおすすめします。


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フンコロ騎士とスカラベのマーカー


王家の水路は暗い。デザインも動きも突拍子もない奇妙なムシだらけで、おれの放浪者は満身創痍だった。急に材質が土っぽくなりムシの姿が消えた通路の奥で、最初に出会ったのは声である。
「キートス! キートス! パリヨン!」と聞こえてきたので、……なんかこの先にテンションの高いフィンランド人がいるっぽい、引き返そう。と引き返した。「Kiitos paljon.」どうもありがとうの意、空耳である。ついでに、純白の騎士はフェイント攻撃時に「おバカ~!」と言ってるようにしか聞こえないので日本人かもしれない。「なんかやばいやつがいる」それが彼の第一印象だ。

上層の一区画は、地面も壁も天井も凝縮されたフンでおおわれており、非常にユニークな光景(と強烈な臭い)を作り出している。こうしたフンは何者かが水路のあちこちから集めてきたもののようだ。
ーエリーナ記録・放浪者の日誌よりー

土っぽく見えたのはフンであり、しかもあちこちから集めてきたものらしい。現実のフンコロガシことタマオシコガネはゾウやウシなどの草食獣の獣糞を糞玉にして後肢で蹴って転がして運ぶ習性がある。日中は太陽の位置を記憶して方向を決め、夜間は太陽光と月光が地球の大気で散乱してできる偏光パターンや天の川を記憶して方角を確認するそうだ。天文ファンなムシである。
⇒2015年8月27日付けナショナルジオグラフィック『フンコロガシはなぜ空を見ながら糞を転がすのか』

現実の虫のなかで何をスカラベと呼ぶかは諸説あるが、コガネムシ全体をまとめてスカラベと呼ぶ場合もある。しかしコガネムシ科は少なくとも3万種存在し甲虫全体の10%を占めるが、みんながみんな糞を食べるわけじゃない。食糞性のコガネムシは糞虫と呼ばれる。
糞虫:糞を食べる甲虫目コガネムシ科の分類群。タマオシコガネの仲間は食糞性、同じコガネムシ科でもカブトムシやクワガタムシは食葉性。さらに食糞性グループのなかでも「トンネル屋」は糞を坑道に運びこむだけ、糞球を作って地表を転がす「転がし屋」と習性が異なる。みんながみんな糞を転がすわけじゃない。

そんな転がし屋を、古代エジプトでは糞玉を転がす姿を日輪に見立て太陽神ケペラ(存在に至る、の意)の化身=創造・復活・不死のシンボルとして崇拝した。
「とくに、ハヤブサの翼をあしらった”護符スカラベ”を身につけることは一般人にまで普及した。それは心臓の役をになうと考えられ、死者の心臓と置き換える儀式まであった。ミイラとともに出土する例が多いのもそのためである。また、スカラベはオスしかいないと信じられ、オス=武人の再生の象徴として、兵士たちにスカラベ型の指輪をはめることが流行した。そしてこの習俗は古代ローマの兵士にも伝承され、長い命脈を保った」
⇒JATAFF1995年研究ジャーナル18巻・11号梅谷献二虫の雑学『はるかなるスカラベ』より抜粋

現代生物学界隈では腐食連鎖系の一翼を担う超重要生物として線虫、原虫、ミミズ、ダニ同様崇められ……てはいないが、森林農業酪農分野で研究されてる。日本ではコガネムシの幼虫は昔から「根切り虫」(地表に近い茎を食害する夜蛾の幼虫も同名)と呼ばれ根の食害、成虫は葉の食害により害虫に分類されるけど。

フンコロ騎士がハロウネストで「心優しき勇気と名誉の神」なのは↑これらすべてを内包した結果であると思われる。腐食連鎖系のスター騎士。


フンコロ騎士について公式では以下のように説明される。

フンコロ騎士
王家の水路の中枢に暮らす、熟練の戦士。フンをかためた球体で侵入者を攻撃する。
戦いの目的などは、名誉のためでも忠義のためでも土くれのためでも、なんだってよいのだ。なにかを殺すなら、そいつは自分のために殺す。それが狩猟者というものだ。
ー狩猟者の書よりー
水路の一画を自分好みの戦い方とライフスタイルに合わせて変革した、奇妙な戦士。
自分が大切にする場所を守るために戦っており、その戦法と臭いの異常性はさておき、非常に強い心の持ち主である。
かれは戦いのスリルを楽しんでいるようね。
なんだかこっちにも元気が伝わってくる感じ!
―エリーナ記録・放浪者の日誌より―


≪フンコロ騎士と守護者の紋章が特別扱いすぎる理由について考察する≫

なにが特別って、戦って勝利しても彼方に飛んでいくだけで倒せないのである。しかも茶色のガスのようなものがボワボワするけどオレンジジェリーは散らばらない。首をひねりながら通行し、再び戻ってきたときに地面から顔を出された恐怖! 準備してないのに再戦か、と思いきや話せるようになっただけだった。ほっ。あと、戦闘中の『Dung Defender』は珠玉の1曲に思うΣ(・ω・ノ)ノ!

あれは完全にわたしのあやまちだった。きみをてっきり思考のない抜け殻連中の仲間だと勘違いしてしまったのだ。
ーフンコロ騎士ー

狩猟者の書を手に入れて最初に驚くのは、ああ、今まで問答無用でおれの放浪者が倒してたのは徘徊する死体=ムシゾンビだったのかー、ということだと思う。いや、それまでもスタグとクィレルが示唆してたような気もするけど、きっぱり「死体」と明言されるのはここが初じゃなかったかな。

ホウロウムシ
ムシの死体が不可思議な力によって復活したもの。かつて自分が暮らしていた場所を徘徊している。
いわゆるハロウネストの”文明化した”ムシのなれの果てだ。生きているときから軟弱だったが、それは死んだ今も変わらない。やつらを土に還してやれ!
ー狩猟者の書よりー
タイショウムシ
ムシの死体が不可思議な力によって復活したもの。汚染されていない者を見つけると、積極的に攻撃する。
こうした歩く屍の体内は濃いオレンジ色の霧で満ちており、そいつは甘くて不快なにおいがする。あれはろくなものじゃない。たとえ殺しても、こいつらを食うのはやめたほうがいい。
ー狩猟者の書よりー
オオバンペイ
ハロウネストの大柄な番兵の死体がよみがえったもの。”大釘”を振るう力を持つ数少ないムシ。
死体のわりには驚くほど機転がきくやつだ。上を飛び越そうとすれば捕まえようとするし、逃げれば追いかけてくる。狩るのが楽しい相手ではあるが、向こうが群れているときは注意しろ。
ー狩猟者の書よりー

当初まるでゲームシステムを理解しないまま忘れられた交叉路に足を踏み入れたときに意外だったのは、斬りつけるたびにわざわざ衝撃で放浪者が下がる(ノックバック)ことと、血っぽいエフェクトが散らばることである。丁寧だな、ホラーゲームだしな、ぐらいに思ってた。血じゃなくてオレンジジェリーはストーリーの重要なピースだった。

監視塔の騎士
捨てられた騎士の抜け殻が、汚染されたハエの群れによって復活した姿。
こうした寡黙な戦士たちが戦いで敗れると、その身体が二つに割れて中から奇妙なムシたちが飛び出てくるという。おれが死んだときも、身体の中からなにかが飛び出てくるのだろうか? そしておれの希望と恐れは、暗闇の中に消えてゆくのだろうか?
ー狩猟者の書よりー

これも読むまでよくわかってなかった。オレンジ色の天井から降ってくるやつ、ハエだったのか。そして騎士の装甲、というか鎧のようなものが上層部にいるだれかによって操作されてるのかと思ってたらやっぱり死体だし。言われないとわからない(にぶい)。

オオオ、輝く者よ、われらは祝福された。そなたの光がわれらに触れる。そなたの温かさがわれらを満たす。
そなたの輝く姿のもとに結集し、ハロウネストは再び生まれる。オオオ…
光は命であり、輝き。純粋で、すばらしきもの。その光をさえぎることは、自然を抑圧すること。
自然は歪みを抑圧し、われらを病でつつむ。光を祝福し、結合を果たすのだ! オオオ…
ーコケの予言者ー

コケの予言者にいたっては、会話してるから生きた状態で操られてるというか、なんというかという状態である。少なくともこの時点では死体ではない。このコケの予言者の発言について、エリーナは警告してる。

コケの予言者
コケむした伝道者で、耳を傾ける者すべてに対し、「輝く者」とハロウネストの全生物を団結させる光に関する布教活動をしている。しかしその身体がすでに汚染に侵されていることからも、その言葉をそのまま信じるのは危険かもしれない。
ーエリーナ記録・放浪者の日誌よりー

しかしほんとうに「死体」なのだろうか。「死体」と認識してるのは文明国ハロウネストサイドの視点であって、自然界の視点では死んでないのかもしれない。それとも何度も甦るからリビングデッドなのか? 王国のはずれで聞いたバードーンの発言はちがう。

ああした生物は異なる種類の結合の結果。ウィルムの試みは拒絶されたのだ。
我は光の誘惑に抗する。提示された結合の形は、思考を心より失わせ。ムシを本能のみで生きるものとするもの…
ーバードーンー

……ん? 「ムシを本能のみで生きるものとする」ということは生きてるんじゃ? 言葉を失うことはハロウネスト的ムシとしては死であっても、本能のみで生きるムシってふつうである。さらに長すぎるゾートの教えの最後から2つ目はどう解釈すればいいのか。「輝く者」の光を拒絶すると病気になってしまうのである。日照不足による季節性うつ病みたいに?

教えその56:夢を見るな
夢は危険なものだ。自分のものではない、奇妙な考えが精神に入りこんでくる。そしてそれを拒絶すれば、身体が病で犯される! だから夢などそもそも見ないほうがよいのだ。吾輩のようにな。
ー強靭なるゾートー

そしてフンコロ騎士が「きみをてっきり思考のない抜け殻連中の仲間だと勘違い」したということは、外見上の差はないのである。目の奥がオレンジ色のこともあるけど、べつにオレンジ色じゃないこともある。しいて言えば生前の姿を知ってる者がゾンビ化した場合は判別できるが、そうじゃない場合は「汚染されていない者を見つけると、積極的に攻撃する」かどうかでしかわからないということである。しかし攻撃されてから応戦していては危険すぎるので、フンコロ騎士のように見つけたやつら片っ端から攻撃するスタイルにしかならないんじゃないかしら。

守護者の紋章
ハロウネストの王がもっとも忠実な騎士に対して与えた、特別なチャーム。傷つき汚れているが、それでも大事にされていた形跡がある。
身につけた者から独特のにおいが放たれるようになる。
ーアイテム説明よりー

そして守護者の紋章が特別すぎる。NPCのセリフ変わるし、遺物の探究者レムは取引してくれないし、足を喰らう者は値引きしてくれるし。

うぬぬ! いったいなんのつもりだ? そんなひどい臭いをただよわせてワシの店に入ってくるとは!
ここにある遺物はただでさえ痛んでおるのだ。その上そのようなひどい臭いがつきでもしたらたまらん。下水道だかどこだか知らんが、さっさと来た場所に戻るがいい!
ー遺物の探究者レムー

足を喰らう者がいなくなってしまってショックを受けてたら、ディヴァインのテント内にその前肢が落ちててショック倍増した。ディヴァイン姐さんのこのセリフ、放浪者に対して言ってるのかと思いきや足を喰らう者(腹の中?)に言ってたらしい。

わたしの王はただひとり。でもあなたの記憶は、わたしの心の一番近いところにとどめておくわ。
ーディヴァインー

おれが1番好きなのはタックのセリフだ。フンコロ騎士の生活が垣間見える。

ミュウウウウ…? あなたのにおい…あなたもかれの友だちなの? もしそうなら、わたしの食べ物をわけてあげるわ。
こんどかれと会ったら…お礼をいっておいて。助けてくれてありがとうって。
ータックー

そしてチャームの材料(?)も死体が多いようだが、王はこの特別すぎるチャームをどうやって調達したのだろうか。

ねえおチビさん、あなたはチャームがどうやって作られるか知ってるかしら? ちょっと暗い話だからあまりこういうことはお客さんに教えないんだけど、あなたは利口だから、すでに想像がついてるんじゃない?
チャームが生まれる理由はいくつかあるんだけど、一番多いのは死んでゆくムシの最後の願いが結晶化したケースね。それがこういうゴージャスで強力な道具になるってワケ。
(中略)つまりあなたはムシたちの魂をコレクションしてるってわけ! あなたがカバンか財布か…あなたがチャームをどこに入れてるかわからないけど…とにかくその中に知らないムシがいっぱい入ってるって感じ!
ーチャームを愛する者サルブラー

こんなに特別枠にもかかわらずイズマの森に行ってないのである。少なくともイズマが息を引き取った(いや、ムシや植物なら休眠状態かもしれないけど)後、訪れていない。

おお! その涙… きみは彼女の森を訪れたということか!
わたしも訪れると誓ったのだが…わたしの任務と…誓約が…
ああ、すまない。単なるたわごとだ。どうか気にしないでくれ。気を抜くと昔の記憶の中に沈みこんで、戻ってこれなくなるのだ。
彼女はその者を見極める確かな力をもっている。よって彼女の祝福を受けたということは、きみはやはり特別な存在だということだ。わたしのような者よりもずっとな!
ーフンコロ騎士ー

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フンコロ騎士が守るイズマの森の水位調節バルブ

でもイズマの森への途上にはハネバンペイらがいる。……あれ、守れてなくない? と思ったけど、「かつて自分が暮らしていた場所を徘徊」してるならハロウネスト繁栄期にすでにここを警備してたということになる。しかも永遠なるエミリシアのいる部屋へ穴が開いてる。上から開けた穴でなければ、下から開けた穴ということになる。だとすれば、エミリシアはイズマの森で暮らしてたもしくはイズマの森へ追放された、ということになる。

なんとも興味深い種ね。とはいえその純粋なオーラも、我らの親愛なる王の光には及ばないけれど。
その脆い花はあなたが持っていなさい。わたしにはすでに世話をすべきものがあるし、それはその花よりもよっぽど美しいものよ。わかっているでしょうけどね。
ー永遠なるエミリシアー

エミリシアの周りで光る花のことだろうか、それともイズマの森のことだろうか。まるでわかってないので、もっと説明してほしいのだが。それにしても遅くともハロウネスト繁栄期から生き続けたうえ、蒼白の王ウィルムへの圧倒的な忠誠を変わらず持ち続けてるのである。オグリムもエミリシアも何故、汚染に屈しないのか? そもそも何故生き続けられるのか? もしかして酸のそばにいるから?

王国のはずれで会ったコーニファーが気になることを言ってた。

この様子を見るかぎり、都の住民たちはこれより先に建物を作ることをためらったようだね。いったいなにが彼らを押しとどめたのだろう?
ーコーニファーー

そしてヘラルド一派の手になる石板にも気になる記述がある。

我らは時代の終わりを告げし者、師ヘラルドの道を語る。
我らと同種の精神が結合せし場所で、
酸の脅威の源の横で、(後略)
ー王国のはずれの石板よりー

「酸の脅威の源」つまりイズマの森は高温強酸性熱水の地底噴出孔? まさかここ深海じゃないよね? 極限環境といえば古細菌である。イズマはムシでも根でもなく古細菌がモデルなのだろうか。

デュランドゥー
堅い殻におおわれた歩行生物。酸の浅瀬の中を歩いていることが多い。
強烈な酸の川の中で生きることができる、数少ない生物のひとつだ。しかしああいった酸はいったいどこから流れてきているのだ? まるで生者の憎しみで沸騰しているかのようにも見える。
ー狩猟者の書よりー

数少ない生物のなかには緑の道の守護者ウヌもいる。

ランタンに火は灯され、きみの声は聞き入れられた。素晴らしい舞台を選んでくれたな。ムシと根で構成されるこの王国は、我々の儀式を実行する場所としていかにも相応しい。
ー巡業団の長グリムー

グリムの緋色の目には「ムシと根で構成されるこの王国」に見えてるらしい。しかしバードーンはこの王国はすでに滅んだと言う。

この灰に埋もれた地はウィルムの墓。ウィルムは死んだといわれている。だがあのような古の者にとって死とはなんだ? さらなる変化であろう。
そしてその死の際に発生した事象によって、この王国は滅びた。
(中略)この舞い落ちる灰は脱皮の証。ウィルムの死体は腐っていく。その終わりなき静けさ…哀しさ。
それが消えたとき、世界は縮小する。
ーバードーンー

自らの脱皮したボディ(白い粉は炭酸カルシウムぽさもある)で酸性土壌をpH矯正して弱酸性あるいはアルカリ性寄りにするなんて、蒼白の王ウィルムはミミズっぽい。現実のミミズが「いにしえ」と呼べる4億年前にはいたことや眠り姫仮説(地中のバクテリアは普段眠ってるがミミズやヤスデの活動により起こされて活性化するのではないか、という説)を思い出し、さらに脱ぎ捨てられた殻の形状はミミズっぽさもある。ただし重大な問題としてミミズは脱皮しない。うん。そのため、おれは線虫の方がモデルだと思ってる。線虫は雌雄同体と雄しかいない。雌雄同体で精子や貯精嚢をつくらず雌化した個体を雌と呼ぶらしい。だからホーネットは後天的に”性を持った子”by助産師ということなんじゃないかと思う。

どちらにしろここハロウネストは土壌中の宇宙を壮大に描いた物語として傑出した作品である。

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「…この灰…囚われている…」は「この灰が」なのか「この灰に」なのか不明だが、「この灰が囚われている」のならウィルムの殻は何に囚われているのか。一瞬雪原の上にでも出られたのかと錯覚しそうなこのベンチが気に入ってる

温泉
ハロウネストの深部には、火道を通った熱が表層まで達している場所があり、王国はこうした自然現象を利用することで、ムシたちがリラックスできる温泉施設を作った。このような温泉は王国のいたるところにあり、敵意を持ったムシたちにあふれる土地を旅する者たちにとって、疲れを癒す格好の場となっている。
ーエリーナ記録・放浪者の日誌よりー

もともとの先住民が暮らす地域に対して緑の道は属州にし、カマキリ族とは停戦協定を結び、ハイブとは不可侵条約を結ぶなど差があることも含めて古代ローマ帝国に似た統治支配のやり方である。同時に、温泉施設も含めたインフラ建造物を鬼のように作りまくった点も共通する。暗闇の巣で獣たちに拒絶されて2つめのトラム建設放棄したにもかかわらず温泉はあるのだ。

ハロウネスト以前の時代の遺物としては、こうした卵がもっとも人気があるのだ。だがあの時代の遺物はこれだけではない。
ソウルを内包している古い彫像を見たことはないか?
この卵より大きく、粗野な形ながら、あれもまた前時代の証明だ。
ー遺物の探究者レムー

そして無尽蔵のソウルを生みだせるのは蒼白の王ウィルムだけではなく、古い彫像ソウル・トーテムも同様である。最初はドラゴンぽいかと思ったんだけど、こっちこそミミズがモチーフだろうか。

つまり、もともと不老不死のフンコロ騎士が蒼白の王ウィルムのもたらすソウルによってさらに活性化した姿が純白の騎士である。ウィルムが去ってソウルによる活性化が終了すると死、というか不活性状態で動けなくなったムシも多かったのではないか。しかし彼はフンコロ騎士に戻っただけである。だってもともと不老不死だし。

わたしはかつて騎士だったのだ。偉大なる王のかたわらに誇り高く立ち、ハロウネストが繁栄していく様子を見守っていた。
そんなときにあの悲劇が起きてな…
我々騎士は実体あるものと戦うことはできる。だがあのように形を持たぬ敵を、いったいどうやって倒せばよいというのだ?
王はなんとか事態に対処しようとした。無慈悲なやり方でな…しかしそれでも、我々の数は減る一方だった。
ーフンコロ騎士ー

なにしろハロウネスト黎明期から滅亡後けっこう時間経過した現在までここにいるのだ。桁違いに長命なムシであり、どうりでひとりだけ饒舌なはずである。こんなに近くにいるのになぜ遺物の探究者レムはフンコロ騎士と話をしないのか。

王国にいた五体の偉大な騎士については知っているか? 彼らはハロウネスト中で敬われており、王国の年代史の中でもしばしば言及されている。個々ではなく、ひとつの集団としてな。
個々の名前や外見などは、歴史から消された状態だ。
彼らが生きたのは相当昔なだけに、もし個々の身元を調べ出すことができれば偉大な発見となるだろう。
ー遺物の探究者レムー
ワシの店はすばらしいだろう? ワシは決してここを不法占拠しとるわけじゃないぞ。
ワシが来たとき、この場所はもぬけの殻で、塔の所有権を主張する者は誰も生きていなかったのだ。
ー遺物の探究者レムー

つまり涙の都で最も若輩なのがレムなのだ。しかもごく最近開店した。なぜ老人(ムシ)の姿で描かれてるかと言えば、もうすぐ死ぬからである。たぶん。それはダートマウスの老いたムシも同様である。短命のムシにとって1シーズンあるいは1年より以前は大昔と言える。数週間で死ぬムシなどザラだ。
しかし涙の都には不老長寿(不死ではない)と思しきムシが他にもいる。

わたしのかもし出す気品に気づいたようね? お察しのとおり、わたしはハロウネストの上流階級でも名の知れた存在よ。
いえ…存在だった、といったほうが正確ね。あの愚か者たちのせいで追放されてしまったから。
わたしの昔の知り合いには会ったかしら? 外にいる連中のことよ。思考もなにも失って、ただ身体を引きずって歩いてる。わたしはこうしてまだ生きながらえて、かれらの哀れな様をながめているというわけ。
わたしはほんとに幸せよ。運命っていたずらなものよね。
以前だったら、あなたのような者と口をきくことはなかったでしょうね。でもわたしの階級の者たちはみんな死んで、遠くにいってしまった。
ー永遠なるエミリシアー

シロアリがモデルなんじゃないかと思ってる。腐食連鎖系においてセルロースを動物性たんぱく質に変換できるシロアリは技能的にもボリューム的にもスタームシと言える。特にヤマトシロアリは体長3~5mmにもかかわらず30年以上の不老長寿で繁殖し続けるやばいムシだ。活性酸素を抑制して細胞の老化を抑制しつつ抗酸化酵素活性と嫌気代謝(以下省略)。壁に穴あいてるかんじとか。

これだけ長く生きているにもかかわらず、ほんのわずかの記憶しか持たない…それは幸運と思うべきか?
すべての悲劇は消去され、拙者の目に映るのは壮大なる美だけ…
ークィレルー

クィレルも少なくともホロウナイト封印任務のさいにはマダム・モノモンの側らにいたはずである。本人(ムシ)が記憶を飛ばされてるのでホーネットか白いレディがおぼえてなければ本当にだれもおぼえてない。でも釘を逆手で持つのクィレルと純粋なる器だけなら、彼もおぼえてるかもしれない(まだ112%まで行けてないのでなんとも)。記憶がなくなることは「自由」なのか。

わたしの騎士…少なくともあなたは自由になった。
ーハイブの女王ヴェスパー
正直、わたしはそれをどこで手に入れたのか覚えていない。だがその造形を見ていると、わたしの記憶がうずく気がするのだ。どこか遠くで失われ、忘れ去られてしまった誰か、あるいはなにかを語っているかのようで。
ーニムー

不老不死のムシが見続ける夢

彼が帰還した際には、きみを騎士としてとり立てるよう進言しよう! すばらしい冒険がわれわれを待っているにちがいない…
ー純白の騎士ー

数少ない記憶を持つムシたちが放浪者をウィルムと見紛っても「王の刻印の効果絶大だなー」ぐらいに思ってた。でもこれを読んだら急に、ああ、放浪者の仮面の下はウィルムの中身が入ってるのかと目が覚めた。Team Cherryの趣味的に。せっかくなのでもう1度、Team Cherryの趣味的に。ミリベルから預金を引き出す方法をおれはノーヒント・ノータイムで理解した自信がある(`・∀・´)エッヘン!! 無邪気で神秘的な美的センスにシニカルな気質が垣間見えるのがこの作品に飽きの来ない理由だと思う。Team Cherry、過去に金融業者にひどい目に遭わされたことあるんじゃ、とも思ったけど。そんなわけで、もう2度と戻って来ない(来れない、クィレルよりも記憶も言葉も失ってるし)敬愛する王を待ち続ける騎士の前に現れた、王の成れの果ての小さき者。奇跡の再会にしては絶望的な邂逅である。しかし騎士は失望するどころか、一緒に冒険しよう、と言う。創造・復活・不死のシンボルにして太陽神の化身と呼ぶにふさわしい、彼は守護者スカラベである。
では逆に元・王はなにしに来たのか、ということである。ホロウナイトの件だけでなく。

わたしたちの力の起源はよく似ている。でもあなたのその…決定的な空虚さを、わたしは共有しない。
ーホーネットー
おまえは暗闇そのものだ…わたしを呑みこみにきた…
ーマーコスー

悲劇を消去しに来た。最後の責任をとりに来た。だから本来ならクィレルやニムのようにオグリムの記憶を消して彼を自由にするか、ハイブの騎士のように自由にするかしなければならなかった。でも失敗したのである。だって不老不死にして心優しき勇気と名誉の神、記憶を司るスカラベのムシなのだ。

新たに王のマントをまとった者がいるようだな。それには恐ろしい責任がともなうであろう。
すべての所有権を主張したムシはいない。獣たちですらその限界をわきまえ、巣のはずれに縄張りをとどめている。
こうした決まりに挑んだのが古において地位を持った者たちであり、ハロウネストの廃墟はその挑戦を反映している。
ー仮面を作る者ー

蒼白の王ウィルムはいまでも囚われてる。じぶんがすべてをなんとかしなければいけない、と。そんな必要ないのに。

フンコロ騎士と守護者の紋章が特別扱いすぎる理由:フンコロガシはもともと記憶を司る不老不死のムシだから(仮説)

旅の終わりに

この滅びた王国は荒涼とした場所に見えるかもしれないが、その過酷な環境にもかかわらず、ここには生命の営みがある。そして汚染の影響を免れているわずかなムシたちが、ハロウネストの廃墟の中で暮らしながら、強さと勇気をもって苦難に立ち向い続けている。この小さな発見は、わたしの心を希望で満たすものだった。
わたしは次の冒険へと旅立つが、どんな未来が待ち受けているにせよ、わたしがこの旅で出会ったムシたちは、これからも力強く生き続けていくだろう。
―エリーナ記録・放浪者の日誌より―

まとめ:放浪者を「友」「仲間」等と呼びかけ親しげに話しかけてくる者たち
老いたムシ、幼虫、コーニファー、イゼルダ、クィレル、マイラ、スタグ、カタツムリの霊媒師、スライ、サルブラ、足を喰らう者、クロース、調停者ジジ、ブレッタ、メイトー、シオ、オロ、マリッサ、グリム、ニム、ディヴァイン、ミスター・マッシュルーム……彼らとともに見た景色は打ち捨てられた放浪者にとっても、もう2度とじぶんの王国へ戻れない元・王にとっても無上の安息をもたらしたかもしれない。
発売延期になった『Hollow Knight: Silksong』は女王ホーネットの物語でいまも制作真っ最中らしいが、叶うなら彼女を「友」と呼びかける者たちに出会えるよう願ってる。そして今のうちに112%がんばれおれ(''◇'')ゞ

Photo_20230820145602
彼に繊細な花を渡したかった

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