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2023年12月 3日 (日)

東京大学総合研究博物館『骨が語る人の生と死』

東京大学総合研究博物館の本館特別展示『骨が語る人の生と死 日本列島一万年の記録より』をみに行ってきました。

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年季が入って雰囲気ある、というよりは心配になる方向性の廃墟み

東京大学総合研究資料館は1966年発足、建物は香山壽夫建築研究所設計/SRC造/地下1階地上8階塔屋1階/1983年竣工で40年モノ。この入口が北向きで重厚なせいか妙に薄暗くて静か。お顔はキュート。

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そんな滅亡した国家の博物館跡廃墟に眠る死体をみに来ました(脳内ロマンス)

入館むりょう。日祝休館で貸出中表示があるところが大学である。いわば研究作業の透かし見的施設、、、かな。平日のお昼間は社会科見学ぽい中学生グループとシニア層個人(おれ含む)しかおらず、ゆっくりできた。
入口すぐは学術標本コレクションである。小さな「撮影禁止」マークあるもの以外は撮影可能。縄文時代後期の貝輪や古墳時代の埴輪、昆虫、鉱物、剥製、植物、サンゴ、骨、道具、レリーフ……、亡国最強の死体愛好家集団がいた廃墟さいこうである(まだロマンスつづく)。

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こちらは「チョウ類の全上科・全科/翅の形・色彩の多様性」

なんというか並べ方(分類)が研究脳だよな、と感じながら観覧した。

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画右端はキリンの骨格標本

多摩動物公園に1971~1985年まで在籍したキクタカという個体らしい。キリンは生きてる姿もかっこいいが、死して骨だけになってもなおかっこいい。

2階の海外学術調査エリアは撮影禁止だったけど、シリアの発掘調査等をまとめたスライドも流してた。シリアの土、赤いな。西アジアの政情不安により2011年から中断。で、ネアンデルタール人の頭骨のレプリカが成人と子の2種並べて展示されてたけど、、、大きい。写真や図でみたことあるし容量が大きかったとは読んでたけど、立体を近くでみると巨大だ。奥行きがたっぷり。しかもイケメン(男女問わず、左右均衡性が高い気がすればそれ)だ。絶滅する前にひとめお会いしたかった(´・ω・`)ショボーン

UMUTオープンラボの見どころ:ネアンデルタール人の頭骨のレプリカ(撮影不可)


人類進化学による骨の解読『骨が語る人の生と死』は動物骨格標本群の奥に展示されてた。やー、よかった。張りつきで楽しんだ。
第一部:骨が語る「生」……縄文人のブ太い上腕骨、縄文人の外耳道骨腫、江戸時代の鉄漿跡が残る歯など
第二部:骨が語る「死」……古墳時代の墓室内配置再現、江戸時代の埋葬など
第三部:病との闘い……それぞれ、がん/梅毒のあとが残る頭骨と結核で変形した脊椎骨
頭骨で最も印象に残るのは歯並びである。以前読んだ馬場悠男『「顔」の進化 あなたの顔はどこからきたのか』2021年で食生活の変化で顎が細くなり歯並びが悪くなったと書いてあったやつを流れでみられてよかった。鎌倉時代まで見事に歯並びきれい。江戸時代で悪くなった、といっても現代っ子どもよりよほどきれい。著者の方は約10年前のナショジオで小顔信仰(?)を不安視してたがこの10年で悪化したとしみじみ感じてる。

せっかくなのでおれが思う見どころ4点を挙げたい。

見どころ①縄文時代晩期の抜歯と叉状研歯(さじょうけんし)
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パンクファッションにもほどがある女性の骨。これで歯の神経(歯髄)は避けられているのだろうか。削るときも痛かったろうけどその後もずっと痛かったんじゃないかしら。麻酔ないよな。でも現代人も陰部にボディピアスあけるやついるから(ずっと痛いらしい)パンクスは時空を超えて仲良くなれそう。

見どころ②奈良・平安時代には空ケース
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古人骨の発見例が少ない時期をあらわすためにわざわざ空ケースを展示してた。グー☆ 薄葬思想と火葬の広まりということが書いてあったが、そんな暇も体力もなかったんじゃないかしら。『羅生門』(虚構)時代だもんな。

見どころ③鎌倉時代の箸
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鎌倉時代のひとたちから出っ歯が顕著になる件「箸を使って食事して前歯の咬耗が減ったせい」を示すために若宮大路で出土した木製箸を展示。鎌倉市内で大量に出土するとのことだが粘土層からだろうか。地下水が豊富じゃないと有機物原型をとどめないのに大量か。そしてどういう保存処理をしてるのかも知りたかった。いずれにしろ源頼朝・北条政子夫妻~足利尊氏・赤橋登子夫妻まで鎌倉時代の諸兄姉がむしゃむしゃしたお箸いいな、ほしい。

鎌倉時代といえばまな箸による演舞(?)が武士の嗜みだった時期だけどそちらは出土してないのだろうか。食事用の箸より長かったイメージあるけど(現在の菜箸や盛り箸のイメージ)、一緒くただったのか。宴席の前にかなり練習もしたらしい。けなげ。
小泉和子『道具が語る生活史』1989年による、19世紀に入るとぱったりと使われなくなったという「まな箸」についての記述「当時の祭りは生産の守護神である御食津神(みけつかみ)に生贄を捧げたのち、共同体構成員全員で共食するというものであったから、神に捧げる神聖な生贄を料理する際、人間の手で触れて穢さないために用いたのが最初だったと思われる。ところが、これは中世に入ると一種の芸能に変化する。というのは古代から中世にかけての料理はほとんどがナマで、魚でも肉でも刺身で食べていたため、宴会といっても料理そのものに豪華さはない」そこから室町時代には包丁師の家元制度まで発展したらしい。鎌倉時代の政には箸がだいじ……だったかもしれない。

見どころ④鎌倉時代共同墓地の武器による損傷がある頭骨
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それぞれ刀、鈍器、刃物、槍と推定された傷跡が接合により復元され紙片でマークされてる。かつて「前浜」と呼ばれた由比ヶ浜材木座から大量に出土した人骨のみなさんである。はじめまして! 刀傷があることから新田義貞軍による鎌倉攻めの戦死者かという話だ。鎌倉時代市中で何度も合戦はあったけどお寺の改葬記録等が根拠らしい。となりに経文らしき文字が墨書きされた頭骨片やクジラやサザエもいっしょに。

まとめ:死体をみてると落ち着く
人類進化学者にとって古人骨は労して発掘した資料であり試料だが、一般の現代人にとっては鑑賞対象であり精神安定剤である。ホラー映画に曝露療法と同様の効果がありストレス耐性があがるという研究があった(うろ憶え)。そうは言っても、死臭はおもに嫌気性細菌による生成ガスなので高濃度で吸い込むと人体に有害であり無防備にそこらへんの腐乱死体(人畜問わず)には近づかないほうがいい。しかし埋められ骨だけになり再び起こされ洗浄保存処理され骨片注記から組み立て調査研究された死体なら顔を近づけても問題ない。ずっとみてられる。話しかけたいぐらいである。ねえ、仏菩薩の約束した浄土は見つかった? まさか大学の資料館に収蔵されてこんなに明るい照明を浴びせられておれなんかに鑑賞されて怒ってない? ねえねえ。



馬場悠男『「顔」の進化 あなたの顔はどこからきたのか』2021年


小泉和子『道具が語る生活史』1989年



予告編

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